もう戻れない



影宝会。


地区全体を牛耳る権力と威力を持つ、大きな暴走集団。


台風が吹き荒れる深夜、トップが銃殺された。争った形跡もなく、身内の犯行だろうと断定された。


警察はトップに一番近い存在だった、長畑 秀を容疑者として逮捕。

本人は容疑を否認し続けたが、銃に指紋が残るという決定的な事実の元、無実は証明されなかった。



長畑 秀は影宝会とそのトップを裏切ったとみなされ、刑を終えて出所した日に、刑務所の前で抹殺された。



_________



こんなの、抗えるわけない。不当だ。



側近だったというだけで、犯人に仕立て上げられるのは、きっと誰かの都合が悪いから。警察もこういうグループの事件には、なるべく関わりたくないんだ。



何も話さない、ただ笑っているだけの遺影の前で、胡座をかいて一点を見つめる。



兄の長畑 秀は暴走族だけど、弟の長畑 晃輝にとっては優しい兄で、周りからも慕われる人だった。




「秀が人を殺すわけない」




警察にも言ったし、噂を聞きつけて興味本位で話を聞きに来た記者にも訴えた。


それでも暴走族という肩書があるだけで、〝あいつらを怒らせたら終わりだから〟とイメージで勝手に犯人だと決めつけた。



世間が思う人間性と俺だけが知っている秀の人間性には、大きな相違がある。




俺だけは秀を信じている。絶対に人は殺さない。真犯人を見つけて、秀の無実を証明したい。




「晃輝…」




秀の彼女の沙和さんだって、きっと秀が犯人じゃないと思っているはず。俺が探さなきゃ。


涙を流すのは、秀の無実が明らかになってから。




「探す」


「私も一緒に探す。お父さんを殺した人、絶対秀くんじゃないと思う」




艶やかに流れる腰あたりまで伸びた髪を結って、まさに麗しい人。俺の背中に手を置いただけなのに、所作に美しさを隠しきれていない。


こんな俺の犯人探しに付き合ってくれるなんて、申し訳ないと思うくらい俺には勿体無い人だけど、今は少しでも早く秀のために動きたい。




「ありがとう、沙和さん」


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