総長の愛が、重すぎる
夕食を一緒に食べて、お風呂の順番を決めて、予備の部屋着を借りて。

ひとつひとつは普通のことのはずなのに、全部が特別に思える。

蓮の大きめのパーカーを借りると、袖が長くて指先がほとんど隠れた。

洗面所から戻ると、ソファに座っていた蓮が顔を上げる。

その瞬間、目が止まった。

「……反則」

「え」

「それ、可愛すぎ」

ぶかぶかの服を見下ろしてから、蓮は深く息を吐く。

「貸すんじゃなかった」

ひまりは一気に恥ずかしくなる。

「そんなこと言われても」

「俺の服着てるのがだめ」

低い声で言われて、胸がどきっとする。

蓮はソファに座ったまま、ひまりへ手を伸ばした。

「おいで」

たったそれだけなのに、逆らえない。

ひまりはそろそろと近づいていく。

すると蓮はその手を引いて、隣へ座らせた。

距離が近い。

肩が触れて、太ももも少しぶつかりそうになる。

「れん、近い」

「近づけた」

前にも聞いたような言い方に、ひまりは困ったように笑う。

でも今日は、前よりずっとどきどきする。

外は雨。

家には二人きり。

しかも今、自分は蓮の服を着ている。

意識しないほうが無理だった。

しばらくテレビをつけていたけれど、どちらも内容なんて見ていなかった。

沈黙が落ちるたび、心臓の音ばかり大きくなる。

やがて蓮が、ゆっくりひまりの肩を抱いた。

「……緊張してる?」

耳元に近い声に、ひまりは素直にうなずく。

「してる」

「俺も」

「蓮も?」

「かなり」

意外すぎて見上げると、蓮は苦しそうに笑った。

「おまえが無防備すぎるから」

「む、無防備じゃないよ」

「俺の服着て、そんな顔で隣にいたら無理」

そんなこと言われたら、どうしていいかわからない。

ひまりが黙りこむと、蓮の指がそっと頬に触れた。

「顔赤い」

「れんのせい」

「知ってる」

そう言ったあと、蓮は少しだけ真剣な顔になる。

「……キスしていい」

ひまりの鼓動が大きく跳ねた。

今日は何もかも近い。

空気も、視線も、触れる手も。

でもこわくはなかった。

蓮がちゃんと聞いてくれるから。

ひまりは小さくうなずく。

その返事を見た蓮の目が、ひどく甘くなる。

そっと頬を包まれて、ゆっくり唇が重なった。

最初はやさしく、触れるだけ。

でも離れたあとも、蓮はすぐ近くでひまりを見つめたまま動かない。

「……もう一回」

かすれた声でそう言われて、ひまりは目を閉じる。

今度のキスは少し長い。

やわらかくて、あたたかくて、でも前よりずっと熱い。
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