きみの居ない春を、まだ知らない
第一話 八年ぶりの名前
雨の日が嫌いだった
正確に言えば、雨の日になると思い出してしまうことが嫌いだった
小川玲奈は、駅へ向かう途中で空を見上げた
灰色の雲が、街の上を低く覆っている
天気予報では、雨は夜からだった
だから傘を持ってこなかった
「……最悪」
ぽつ、と頬に冷たいものが落ちた
一度気づいてしまえば、雨はあっという間だった
玲奈は鞄を頭の上に乗せて走った
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第一話 八年ぶりの名前