雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる。無自覚万能令嬢は『普通の生活』をお望みです!
1.雪山に捨てられた少女、伝説の元最強諜報員に拾われる

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 その日、ロングレイン侯爵令嬢のエノレアは雪山に捨てられた。
 身にまとっているのは、薄い水色のドレス一枚だけ。足元は、メイドの使うような質素な布製の靴だ。

「誰か! 誰か助けて!」

 エノレアは力の限り叫ぶ。
 けれど、応える者はいない。

(寒い……)

 しんしんと雪が降り積もり、辺りは一面白一色だ。
 既に指先の感覚はなくなり、意識は朦朧としていた。

「誰か……助けて……」

 力を振り絞って歩こうとするが、力尽きてその場に倒れ込む。
 横たわる体に、雪が降り積もる。

(私、死ぬのかな。お母さん……)

 そのとき、「おいおいおい。なんでこんなところにガキがいるんだ?」と誰かの声が聞こえた気がした。

(……誰?)

 もう顔を上げて確認する気力すらない。

「おい! おい! お嬢ちゃん、生きてるか? おい!」

 必死に呼びかけてくるのは、焦ったような声。
 応えることもできないまま、エノレアの意識は闇に呑まれた。

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