世界で1番近い君と、1番遠い初恋

​9年ぶりに降り立った生まれ故郷の駅は、昔と変わらない潮風と日だまりの匂いがしていた。

​橘家の2階の自室に入り、窓を開ける。

目の前には、見慣れた神楽家の赤い屋根。

あの夏の日からずっと止まっていた私の時計が、カチリと音を立てて再び動き出すような高鳴りがあった。


​私は、幸平と同じ県立高校への入学を決めた。

新品の制服の袖に腕を通し、鏡の前で何度も髪を整える。

胸の中は、期待と緊張で今にも弾けそうだった。


​(幸平、どんな顔をするかな。背はどれくらい伸びたかな。私のこと、ちゃんと覚えててくれてるかな。)


​スクールバッグの奥深くにひっそりと忍ばせた、星のガラスキーホルダー。

それを指先でそっと撫でながら、私は桜舞う校門をくぐった。


​けれど、私の甘い期待は、入学式が終わった直後の教室で木々に砕け散ることになる。



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