世界で1番近い君と、1番遠い初恋
12月に入り、街を包む風が肌を刺すような冷たさを帯び始めた、ある冬の日の昼下がり。
秋の間、互いに視線すら合わせず、まるで他人のように過ごしてきた私たちだったが、その静寂は突然破られることになった。
校内は、昼休み前から異様な噂話で持ちきりになっていた。
「ねえ知ってる? 1組の神楽くん、彼女と別れたらしいよ」
「えっ、マジで? 今回は神楽くんから振ったの?」
「ううん、逆らしいよ。彼女ちゃんから『秋の間もずっと橘さんのこと避けてたけど、本当はそれだけ橘さんのこと意識してるからでしょ! もう耐えられない』って泣き叫んで振られたんだって……」
図書室のカウンターで返却処理をしていた私の手が、ピタリと止まった。
胸が嫌な音を立てて波打つ。
(秋の間、ずっと顔すら合わせていなかったのに……幸平が……振られた……?)
胸騒ぎを抑えきれず、私は早足で1組の教室へと向かった。