『みすとら』 小さな恋の物語

10.学食と桜美雪

「あんた、またハンバーグ食べてるの?」ユキがカスミに言いました。
「そ~だよ~。好きなんだもん」カスミは毎日夕食で、ハンバーグを食べていました。
「好きったって、同じ味でしょ?」
「違うよ~。今日は、おろししそチーズインハンバーグなの~」
「おろししそとチーズがあうのかしら~?」ユキは不思議そうでした。
「あんたは、いつも焼き魚ね~。今日はサンマかしら?」ユキが私に聞きました。
「そうよ。ここの焼き魚は、とても美味しいのよ」私は言いました。
「そうだけどさ~。あんたたち、毎日似たようなもの食べてない? いろいろなメニューがあるんだから、いろいろ食べてみれば~?」そういうユキは、洋食が多めでした。
「ユキは、なに食べてるの~?」見てみると、本日のおススメ『ずどどど・ドリア』でした。
「何これ?」
「ドリアなんだって~」
「お米の入った、グラタンでしょ?」カスミが言いました。
「ん~、まぁ、そうね。『ずどどど』が気になったんだけど関係ないみたい」
「それに惹かれて頼んでみたの?」私は聞いてみました。
「好奇心には勝てなかったわ~」
「昨日の夕食は『せせらぎ牛丼』を食べてたよね?」カスミが聞きました。
「何のせせらぎも感じられなかったわ・・・」
「ユキって、そういうところあるよね?」と、私が言うと、
「はい、はい。私は個性的な表現に釣られやすいのです」
「面白いと思うよ。もし今日注文しなかったら、次は食べられないかもしれないでしょ?」
「そうなのよ~。そう考えると、変わったものを注文してしまうの・・・」
ユキが変わったメニューを注文してくれるので、私とカスミはそれを楽しんでいました。ユキのメニューが、結果的に毎回平凡なので、自分の選択の正しさを確認していたのかも知れません。
「そういえば、ユキの名前って、どうやって決まったの?」私は質問しました。
「親が、季節感を無視したのよ」
「どういうこと?」
「私が産まれたのは夏なんだけど、『名字が春で、夏生まれだから、名前は冬にするんだ!』って、お父さんが決めてしまったの」
「秋は無いの?」カスミが珍しく質問しました。
「『飽き(秋)が来ない』性格になって欲しいんだって~。ヒトの名前で遊ばないで欲しいわ~」ユキはウンザリしていました。
「お~! 上手い!」私は感心しました。
「結婚したら、名字が変わるかも知れないのにね~」
「変わらないかも知れないよ」カスミがこんなに会話に入ってくることは、珍しいことでした。
「そうよね~。将来なんか分からないわ~」
< 10 / 17 >

この作品をシェア

pagetop