一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
「いえ。彩乃が仕事を大切にしていることは知っていますから」
「まあ」
 社長が嬉しそうに笑う。
「本当に素敵な旦那さんね」
「ありがとうございます」
 そのやり取りを、私は隣で聞いていた。
 胸がいっぱいになる。
 社長に仕事を認めてもらえたことも嬉しい。
 湊が私の仕事を理解してくれていることも嬉しい。
 何より、こうして自分のことを話してくれる湊の姿を見ていることが、たまらなく嬉しかった。
 だからこそ、苦しい。
 少し離れたところから、小野さんがこちらを見ているのがわかった。
 目が合うと、満面の笑みでこちらへ駆けてくる。
「湊さん、ちょっといいですか?」
「はい」
「聞きたいことがいっぱいあって!」
「小野さん、やめてよ」
「だって、今まで会ったことなかったんですから!」
 小野さんだけではなかった。
 気づけば何人ものスタッフが湊の周りに集まっている。
「彩乃さんって、家ではどんな感じなんですか?」
「そうですね……」
「休日は一緒に出かけるんですか?」
「最近は一緒に買い物に行ったりします」
「えー、仲いい!」
「彩乃さん、家でも仕事の話するんですか?」
「しますよ。仕事の話をしているときは、楽しそうですね」
「へえ!」
 みんなが一斉に私を見る。
「そうなんだ……」
「知らなかった」
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