一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
 それでも、もう止められなかった。
「私……湊さんが好きです」
 声にした途端、涙が溢れた。
「だから……終わりたくない」
 しばらく、夜の静けさだけが二人の間に流れた。
 何か言ってほしいと思うのに、怖くて湊の顔を見ることができない。
 きっと困らせてしまった。
 約束を守らなければいけないのに、私は自分の気持ちを押しつけてしまった。
 そう思ったとき。
「彩乃」
 低く、落ち着いた声がした。
 私はゆっくり顔を上げた。
 湊が、まっすぐ私を見ていた。
「君は、俺の愛する妻だ」
「……え?」
 一瞬、意味がわからなかった。
「俺が、君を返すわけがない」
 その言葉に、息が止まった。
「返す……?」
「一ヶ月経ったら、はい終わり。そんなつもりで君と暮らしてたと思ってる?」
 湊が一歩、私との距離を縮める。
「俺は最初から、君を手放すつもりなんてない」
「……湊さん」
「君が何を考えているのか、ずっとわかってた」
「え……」
「終わりが来ると思って、不安になってたことも」
 胸が大きく鳴った。
 湊は、そんな私の顔を見ながら、ほんの少しだけ笑った。
「俺だって、同じだったよ」
 その一言が、胸の奥に落ちた。
「ただ、君が自分の気持ちに気づくまで、待ってた」
「……ずっと?」
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