一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
「いや、それは聞いとる」
 たっちゃんは呆れたように息を吐き、手にしていたグラスを置いた。
「お前、旦那おらんやん」
「だから困ってるんじゃん!」
 思わず声を上げると、たっちゃんは呆れたように私を見た。
「……ようわからん。俺にわかるよう説明してくれ」
「だから……」
 私は今日、社長に言われたことを順を追って話した。
 一か月後に開催される会社の創立三十周年記念パーティー。
 そこへ、旦那を連れてくるようにと言われたこと。
 話し始めると、さっきまで胸の中に溜め込んでいたものが、次から次へと口からこぼれていった。
 自分でも、よくここまで黙っていられたと思う。
 一人で抱えている間は、どうにかしなければと思うばかりで、何から手をつければいいのかさえわからなかった。
 しかも社長は、私の旦那をかなりのハイスペックだと思い込んでいるらしい。
 私は説明しながら、どんどん気が重くなっていった。
「……で、一か月しかないの」
「一か月?」
「そう。一か月なんて短い時間で、旦那なんて見つけられないよ……」
 半泣きになりながら訴えると、たっちゃんは大きくため息をついた。
「せやから、早いうちに独身やって言えって、俺、言ったよな?」
「仕方ないじゃん!」
 私は顔を上げた。
「噂が一人歩きしちゃったんだから。もう自分では止められるタイミングすらなかったの!」
「ほんまかいな」
「ほんとだってば!」
 たっちゃんは呆れたように私を見ている。
 わかってる。
 私だって、もっと早く訂正すればよかったと思っている。
 でも、気づいたときには、噂は私の手を離れていた。
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