一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
 けれど、騒がしさはなく、どこか落ち着いた空気が漂っていた。
「ここが俺の家」
 湊さんが先に車を降り、玄関へ向かう。
 私も車を降りると、思わずその場に立ち尽くした。
 目の前にあったのは、想像していたよりずっと大きな二階建ての一軒家だった。
「……」
 思わず見上げてしまう。
 門から玄関までのアプローチも広く、その脇には手入れされた植木が並んでいる。
 きちんと整えられているのに、どこか派手すぎない。
 それでも、一人暮らしの男性が住んでいる家だと思うと、やっぱり驚いてしまう。
 そして何より目を引いたのが、家の前に広がる庭だった。
 芝生が敷かれた庭は、一人暮らしの家にしてはあまりにも広い。
 こんな庭、どうやって手入れしているんだろう。
 そんなことまで考えてしまうくらい、私の住んでいたワンルームとは何もかもが違っていた。
 湊さんが玄関の鍵を開ける。
 その瞬間だった。
「わんっ!」
 玄関の奥から、トイプードルが勢いよく飛び出してきた。
「おい、こら」
 湊さんが笑う。
 さっきまで車の中で見せていた落ち着いた表情とは、少し違う。
 犬は嬉しそうに二本足でぴょんぴょん跳ねながら、湊さんの足元で尻尾を振っている。
 まるで、帰ってくるのをずっと待っていたみたいだ。
「ただいま」
 湊さんがしゃがみ込むと、犬はさらに嬉しそうに尻尾を振った。
「そんなに喜ぶなよ」
 そう言いながら、湊さんは慣れた手つきで犬を抱き上げる。
「……」
 思わず、見とれてしまった。
 仕事をしているときの湊さんは、どこか隙がない。
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