一か月だけの契約妻のはずが、恋愛経験ゼロの私を社長が溺愛してきます
私は、湊さんとどんな結婚生活を送りたいと思っているんだろう。
そんなことを考えた途端、胸の奥が小さくざわついた。
今まで、そんなふうに考えたことがなかった。
私たちの結婚は、普通の夫婦の始まり方とは少し違う。
最初から恋愛をしていたわけでもない。
だから私は、湊さんとの結婚生活を「こういうもの」だと、どこかで決めつけていたのかもしれない。
必要なことを話して。
一緒に暮らして。
困ったことがあれば助け合って。
そうやって毎日を過ごしていけばいい。
それだけだと思っていた。
けれど――。
最近の私は、少しずつ変わってきている。
湊さんと一緒にいる時間を、心地いいと思う。
仕事から帰って、家に湊さんがいることが嬉しいと思う。
何気ない会話をする時間も。
一緒に食事をする時間も。
休日に出かける時間も。
気づけば、私はそんな時間を楽しみにしている。
それは、ただ「夫婦だから」というだけなのだろうか。
「……わからない」
小さく呟いて、私は苦笑した。
考えても、答えは出てこない。
けれど――。
ひとつだけ、今までとは違う感覚があった。
湊さんとのこれからを考えることが、嫌ではなかった。
むしろ。
ほんの少しだけ――楽しみだと思っている自分がいた。
そのことに気づくと、胸の奥がくすぐったくなる。
私は、湊さんとのこれからに、何を期待しているんだろう。
今まで、そんなことを考えたことなんてなかった。