私たちの、都合

私の、好きな人

「僕、リオンっていうんですけど、リオ、ちゃん?」
「そうです。」
「名前、ほぼ一緒ですね。」
私たちの会話は淡々と始まった。
ただ同じクラスになっただけの関係で、席が近いわけでもなくただのクラスメイト。
私は友達と群れることもなく、外の雲を数えるのが趣味な地味系女子。
ピアノが得意であることを知られるのって、あれ弾いてよ!これ弾いてよ!とか面倒だから、誰にも打ち明けていない。
軽音部でギターを弾きながら歌うリオンとは正反対の人間だった。

「僕の指、まじで硬いから触ってみて!」
突然何!?陽キャ怖い。
差し出される指を断ることもできず、一瞬だけ触った。
「あれ...」
ギターを弾いて硬くなった指は、私のピアノを弾く指に似ていた。
「もしかして...」
「気のせいじゃない?」
楽器を弾く者たちは指だけで分かり合える何かがある。
でも私たちはあえて深く突っ込まなかった。
また触りたくなるあの感触、そして一度は聴いてみたいギターの演奏。
たった数秒でここまで惹かれ合うとは思っていなかった。
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