ギャルが異世界にトリップしたら、暗殺一家の大公子とスパダリ婚する事になりました

31.異世界で、大捜査編開幕しまーす⑦

鬼の軍曹化したギルベルトが物置に到着した頃、酒場に残されたランスロットとレヴァリオの2人は、脳虫に脳みそを喰われているジャガル・ロマイと取り残されてしまっていた。

「あの、この状況はどうすれば?良いのでしょうか、ランスロット様」

「んー、僕としてはジャガル・ロマイを白騎士団(ホワイトナイト)の団員の手に渡りたくないんだよねぇ。あの脳みそを食べてる虫の事を調べさせたいし」

「ランスロット様の個人的な、アレですか」

「それもあるけど、調べておいた方が良いと思うんだよね」

「分かりました、この男は捕縛します」

ランスロットの話を聞いたレヴァリオは、ジャガル・ロマイに向かって手を広げ「風檻(ウィンドジェイル)」と呪文を唱える。

シュルルッと音をたてながら風がジャガル・ロマイの周囲に集まり、大き目の鳥かごが作られ、ジャガル・ロマイが逃げられないように捕獲をした。

*風檻(ウィンドジェイル)とは、補助魔法の1つで風を操り、敵を捕まえる牢獄を創り、拘束に使われ、最も一般的に使われている檻系の魔法である*

「あー、あー」
譫言(うわごと)呟きながら、ジャガル・ロマイが風檻(ウィンドジェイル)に触れると、指先は刃物に斬られたような痛みが走り、奴の指先に血が滲む。

小刻みに回転している風に触れれば、簡単に指先は斬られるのは当たり前の事だと、レヴァリオはジャガル・ロマイの行動を見ながら思っていた。

ランスロットは着ているロングコートのポケットから小さな箱を取り出し、風檻(ウィンドジェイル)の中にいるジャガル・ロマイに向かって軽く投げる。

ヒョイッ。

檻の隙間を通って行き、投げられた奇妙な箱はジャガル・ロマイの目の前で巨大化すると、大柄なジャガル・ロマイが箱の中に吸い込まれていく。

その光景を見ていたレヴァリオは、眼鏡を掛け直しながらランスロットに声をかけた。

「ランスロット様、あの箱は魔道具ですか?」

「あー、あれ?モンスターとかを生きた状態のままで捕獲出来る魔道具だよ。人間相手に試した事なかったけど、ちゃんと捕まえられて良かったよ」

ランスロットがそう言うと、ジャガル・ロマイを吸い込んだ箱は元の大きさに戻って床に落ちた。

箱を拾い上げていると、1階から数人が階段を上がってくる足音が聞こえ、ランスロットとレヴァリオの2人が視線を向けると青愁が団員を連れて現れる。

「貴方はレヴァリオ・ヴェスパーでしたよね?申し訳ない、名前が合っているか不安なんだけども」

「いえ、名前は合っていますよ。白騎士団(ホワイトナイト)の第2部隊の隊長である貴方が、何故ここに?」

「上部街の市民から通報を受けまして、我々が駆り出されたんです。隣にいるのはこちらの酒場の客ですか?暗くてよく顔が見えないのですが」

ランスロットがバエルが召喚した蜘蛛達を退治する為に、壁に備えられたランプを1つ投げつけたので、薄暗かった廊下が更に暗くなっていた。

黒髪のランスロットの顔は、青愁を含めた白騎士団(ホワイトナイト)の団員達にもよく見えていない状態である。

「そうなんだよ、白騎士団(ホワイトナイト)の団員さん。1階から騒がしい音が聞こえてさ、降りてみようと思って部屋を出てきたんだけど…。え、何?何かあったんすか?」

状況を瞬時に察知したランスロットは酒場の客のフリをして、青愁に声をかけた。

貴族らしくない馴れ馴れしい話し方で、自分は礼儀がなっていない男として演技をし、レヴァリオもランスロットの演技に自然に乗る。

「貴方、運が良かったですね。1階の客達と一緒に酒を飲まなくて」

「え、そんな事言われたら怖いんだけどっ。本当に何かあったの?見に行っていい?」

「はい?貴方、自分が何を言っているのか分かってます?」

「いや、分かってるけどさ?騎士達が来てるってだけで、ヤバい事が起きてるなら見たいじゃん?」

「いやいや…、本当に何を言ってるんですか?って、ちょっと!!!」

レヴァリオの言葉を聞かずに、ランスロットは階段を下りて行ってしまい、2階に青愁と白騎士団(ホワイトナイト)の団員達が取り残されてしまった。

「全く、酒場に来る客は礼儀を知らない輩が多いですよね!我々の調査部隊が1階の様子を調べていないのに」

「さっさと2階を見て確認して行こう。隊長、ここは我々だけで見て回りますので!」

「もし、生きている客がいたら連れて来てくれ。身の安全を確保しないといけないからね」

「承知しました!」

白騎士団(ホワイトナイト)の団員達は青愁に敬礼をしてから、客達の泊り用の部屋達を確認して行く。

旅の疲れが出ている客がベットで寝ていたようで、数人の団員と男性客の話し声が青愁の耳に入ってくる。

青愁はランスロットとレヴァリオの後を1人だけで追う為、2人が降りて行った階段を降り、1階の店内に戻るが床に転がっている死体しかいなかった。

バンッ!!!

酒場のドアを乱暴に開けて外に飛び出し、顔を左右に動かして2人の姿を探すがどこにもない。

「客を見に降りて行った訳ではなさそうですね」

「隊長?どうかしたんですか⁉急に外に行かれたので、心配しましたよっ」

青愁が酒場の外に出て行った事に気が付いた白騎士団(ホワイトナイト)の団員達は、部屋で寝ていた男を連れてついてきていた。

「おいおい、騎士様達。1階の店で客達が死んでたけど、何かあったのかい?」

「あぁ、この辺で下級の悪魔が出没しまして。市民の安全確保の為、我々はここに出向いたんです」

「悪魔⁉いやぁ、参ったな…」

「安心して下さい、我々が来ましたので。貴方は私達と一緒に、保護されている市民達の所に行きましょう。お前達、この人をお連れしてくれ」

男を安心させる為に優しく微笑みながら状況を説明し、青愁は団員達に男をミニョンの部隊の所に連れて行くようにし指示をする。

指示を受けた団員達は青愁に敬礼をした後、男を連れて酒場を後にし、1人になった青愁は酒場の横にある裏道に入って行く。

カツカツと静かな空間に青愁の足音だけが聞こえ、少し歩いた先に水が流れていない古い大きな噴水の前に2人組の男達がいた。 

「やぁ、君の事だから団員達に上手い事言って、1人で来ると思ってたよ?青愁」

「何をしてるんですか、こんな所で。レヴァリオがいるのは分かりますけど、ランスロット様がいるとは思ってなかったですよ」

「僕は皆が知らないだけで、色々な場所に出没してるよ。まぁ、こうやって変装してるから、気付かれてないけど」

噴水の前にいたのはランスロットとレヴァリオの2人で、青愁が1人でここに来る事を見越して酒場を抜け出していたのだ。

「私達が来る前に誰かいましたよね?その相手は、うちの団員達の耳に入れたくない相手ですか」

「君が来る前に上級の悪魔と出くわしただけさ」

「上級の悪魔ですか…。最近、悪魔の出没が増えているな…」

「悪魔に気に取られているだけではだめだよ?青愁。君達の耳にも届いていると思うけど、|LovePoison
《ラブポイズン》の動きを監視していた方が良い」

ランスロットの言葉を聞いた青愁は、「何故、お前がその薬の事を知っている?」と言いたげな表情をしている。

イーヴェル家の長男でもあるが、ランスロットは独自のルートで情報を集めている為、白騎士団(ホワイトナイト)の団でしか流通してない情報もランスロットが知っている場合があった。

今回、闇市場(ブラックマーケット)で売られているLovePoison(ラブポイズン)の情報は、白騎士団(ホワイトナイト)だけが知っていた情報。

ギルベルト達がLovePoison(ラブポイズン)の存在を知ったのは、上位悪魔バフォメットが現れて甘野芣婭に話したからであるが、ランスロットの場合は情報提供者が不明である。

「ちょっと待って下さいよっ、LovePoison(ラブポイズン)の事まで知ってたんですか⁉噓でしょ⁉」

「あははは!貴方の情報源、本当にどうなってるんですか⁉その薬はうちの団でしか情報共有してないんですよ⁉」

「僕はちょっと顔が広いからねぇ。そこを深堀しようとしても時間の無駄さ、僕の事よりも先の未来の事を考えた方が良い」

「貴方の占いで出た未来の事を言っているのか、薬の事を言っているのかどちらですか」

青愁はランスロットの顔色を伺いながら尋ねると、ランスロットは軽く笑いながら答えた。

「君達の所にも魔法医師(メディサンドゥーマージ)の部隊がいるだろうから、LovePoison(ラブポイズン)の成分を調べて分かってるだろ?この国以外にも薬は出回ってるだろうし、中毒性が高い。僕の体が沢山あったら、君に薬の事を頼む事はなかっただろうね」

「ここからは私の独り言ですが、奴隷商人達がエスポワールや龍華國に貴族や皇族に売りつけているそうです。その人達は常習的にLovePoison(ラブポイズン)を使用し、死亡していると調査結果が上がっています」

「隊長ー!どちらにいらっしゃいますか!!!」

酒場の方から大声で青愁を探している白騎士団(ホワイトナイト)の団員達の声が聞こえ、青愁は騎士服の襟を整えてから裏道に戻って行く。

青愁の背中が見えなくなってから、リヴァリオはランスロットに声をかける。

「ジャガル・ロマイと脳虫の事は言わなかったんですね?ランスロット様」

「脳虫の情報を白騎士団(ホワイトナイト)達よりも、先に調べておきたいからね。青愁の表情を見ただろ?僕がLovePoison(ラブポイズン)の事を口にした時、物凄く驚いていたし。致し方なく情報を交換する時もあるけど、青愁は情報を外に漏らしたくないタイプの人間さ」

「ガルバット団長とは全く違いますね。コンラット団長の友人って事もありますが、我々にも話せる範囲の情報を話してくれますし」

「まぁ、青愁が僕の事を追い掛けてきたのは、ジャガル・ロマイの行方の事を聞き出したかったんだろうけど。聞いてくると思ったんだけどね、聞いてこなかった事が引っ掛かるな」

そう言いながら、ランスロットはコートのポケットから煙草を取り出し、口に咥えるとレヴァリオがマッチを取り出して火をつけた。

「レヴァリオ、ギルにはここであった事は言わないでくれる?脳虫は、僕の知り合いの魔法医師(メディサンドゥーマージ)団体に調べさせる事は言って良いよ」

「質問なんですが、青愁隊長の方はガルバット団長に話すのではないでしょうか?私がギルベルト様に話さなくても、いずれはギルベルト様の耳に入ってきそうですが…」

「奴はガルバットに話さないよ、理由を述べるなら僕と同じで性格が悪いから」 

「え?性格が悪いんですか?青愁隊長」

「僕と同じ人種の奴が性格良いと思う?さて、おしゃべりも程々にして行こうかな」

煙草を吸い終わったランスロットは携帯灰皿に煙草を押し当て、レヴァリオの事を置いて裏道に入って行ってしまう。

***
 
ランスロットが青愁に不信感を抱いていた頃、青愁もまたランスロットに対して不信感を抱いていた。

自分の事を探していた団員達と合流し、ミニョン達が担当している市民を保護しているテントに到着すると、中を覗くと河邉菜穂とルカリオと秘書のアズバルトの姿を見つける。

「皇太子殿下⁉こちらにいらっしゃてたんですかっ」

青愁と団員ッ体は慌てて皇太子の前で膝をついて、頭を下げて挨拶をすると、青愁の前にルカリオが履いている先の尖った靴先が青愁の視界に入った。

ルカリオの靴で青愁は顎を持ち上げられ、真顔のルカリオが青愁の事を静かに見下ろす。 

「ミニョン達に任せて、お前はどこに行っていたんだ?青愁」 

「周辺の酒場に売人の集団を束ねているジャガル・ロマイを連行しようと、ミニョン隊長とは別行動をさせて頂きました」

「その汚らしい男が探していたジャガル・ロマイか」

「いえ、彼は酒場の2階で宿泊してい…」

ドカッ!!!

話している途中の青愁の頬をルカリオは蹴り上げ、地面に倒れた青愁を見ていられなくなった河邉菜穂は手で顔を隠した。 

蹴られた衝撃で唇と口の中が切れてしまい、ポタポタと地面に小さな血の水玉模様が出来ていく。

「た、隊長っ!」

「私は大丈夫ですから、口を出すのはやめなさい」

「し、しかしっ、隊長!」

「お前、名前はなんだ?」

「え?」

突然、ルカリオに声をかけられた団員は突然の事で固まっていると、ルカリオは催促するように優しい笑みを浮かべる。

青愁はルカリオがこれから何をしようとしているのか察し、頭を下げながら謝罪の言葉を口に出した。

「申し訳ございません、皇太子殿下!この者にはしっかり教育をさせますから」

「今、お前に話しかけていないだろう?青愁。君、名前を言えないのか?それとも名前がないのか?」

白騎士団(ホワイトナイト)の団員の中でルカリオの評判は悪く、こんな噂が流れている。

皇太子殿下の機嫌を少しでも悪くさせた者、皇太子殿下に少しでも意見を出した者、皇太子の意に少しでも背いた者は名前を聞かれ、答えた瞬間に首を跳ねられてしまうと。 

この話は噂ではなく事実であり、実際にルカリオに首を斬り下ろされて死亡してしまった団員がおり、どれも理由は理不尽なものばかりである。

青愁は自分の部下の事を守らないといけないと思い、ルカリオに申し出たのだが、ルカリオは青愁の気持ちを無視して団員に名前を聞く。

「どうした?皇太子に聞かれているのに、答えられないのは無礼だろう?」

団員は拳を強く握り締め、覚悟を決めた目付きでルカリオの事を見ながら自分の名前を口にする。

「白騎士団(ホワイトナイト)第2部隊所属のテスト・ロッチィンダ、青愁隊長を誰よりも尊敬している男です」

「テスト・ロッチィンダね」

カチャッ、ズシャッ!!!

ルカリオは団員の名前を口にしながら、男の腰に下げられていた剣を抜き、テスト・ロッチィンダの首を斬られた。

ブシャアッ!!!

テスト・ロッチィンダの首の動脈から勢いよく血が噴き出し、青愁が着ている真っ白な騎士服に返り血が付着すると、保護された貴族達の口から短い悲鳴が出る。

ドサッ。

首を斬られたテスト・ロッチィンダは青愁の前で倒れ、青愁は慌てて抱き起すが、反応のないテスト・ロッチィンダを見て即死だと分かってしまう。

秘書のアズバルトはルカリオの頬についた血をハンカチで拭き取り、テントに戻って来たガルバットの視界には異様な光景が広がっていた。 

自分が戻ってくる前にルカリオが何をしたのか想像がつき、呆れを表情に出さないようにガルバットはルカリオに頭を下げながら声をかける。

「皇太子殿下、馬車の御用意が出来ました。宮廷までお送りします」 

「タイミングが良いね、ガルバット。血を浴びた所為で汚れてしまったから、早く帰りたかったんだ」

「…、こちらです」

ご機嫌になったルカリオは河邉菜穂と奴隷の獣人の少女を連れ、ガルバットと共にテントを後にすると、青愁は拳を地面に強く叩きつけた。

馬車に向かっている中、ルカリオは河邉菜穂に微笑みかけながら声をかける。 

「菜穂、君も僕の側で生活するなら、あの光景にも慣れた方が良い」

「は、はい…、ごめんなさい」 

「いや、お前ならすぐに慣れそうだな。こっち側の素質があるよ?菜穂」

「え?素質?」 

「あぁ、お前はこっち側の人間だよ。今はその純情を楽しんだら良い」

ルカリオはそう言って馬車の窓に視線を向けると、河邉菜穂の隣に座っている獣人の少女が河邉菜穂の手を握ったが、彼女は少女の手を握り返す事は出来なかった。
 
***

同じタイミングで、甘野芣婭達と合流した鬼軍曹化した体に纏われた冷気がどんどん強くなっていく。

ヒュウッと音を立てながら凍えそうな風が吹く中、バエルのが履いている厚底のヒールが凍ると、背後に立っているギルベルトに視線を向ける。

「君、今まで会った人間の中で、綺麗な顔してるね?それに強そう」

フルフルに切断された足が嫌な音を立てながら修復を始め、ギルベルトはすぐに目の前の女が悪魔だと分かった。

シエサに抱き支えられている甘野芣婭に視線を向け、腕に鋭い牙で噛まれた痕が残っているのを見つけ、ギルベルトの怒りが更に沸き立つ。

甘野芣婭の腕を噛んだのが誰なのか察しがついていたが、今はこの悪魔と脳虫をどう処理するかが問題だ。

「お前、悪魔だな。何故、芣婭の前に現れてる」

「何回も説明するのめんどくさいんだけどなぁ…、この子が魔性の女(エンチャトレス)だ…」

シュンッ、グサッ!!!

話をしているバエルの腹に氷柱が貫いた衝撃が体が小さく揺れ、ギルベルトに視線を向けると、バエルに矛先が向いた氷柱達がギルベルトの周りに浮いていた。

ポタポタと足元に血溜まりが出来始め、バエルの中で危機感が芽生える。

ギルベルトはまだ、強力な魔法を使っていない、使っているのは初歩的な魔法だけ。

それだけなのに、ギルベルトは会って数秒でバエルの体を傷付け、獲物を捕らえ殺す視線をバエルに向けている。

「ここは逃げないとまずいなぁ、でもアスタロト様に怒られちゃうなぁ。どうしようかなぁ…」

ブチブチッ!!!

バエルが小声で呟くと服が音を立てて破け始め、人の姿をしていたバエルだったがタランチュラの姿に変わっていく。

「チッ!!!」

その体はどんどん大きくなって行く姿を見たガゼルは、すぐに木の壁を思いっきり叩き付けて破壊した。

ドカッ、ドゴォォンッ!!!

ガゼルに叩かれた木の壁は簡単に破壊され、シエサは甘野芣婭をお姫様抱っこし、ガゼルはゼパの手を引いて物置が崩れる前に外に脱出する。

ケルベロスの2匹とフルフルは空間魔法で一足先に外に脱出し、巨大なタランチュラの姿になったバエルの事をボケッと眺めていた。

「何であの人、勝手に元の姿に戻り出したんですか?」

「恐らく、貴方と一緒に来た人間の事を脅威だと判断したんでしょう。確実に潰しにかかって来たんでしょうねぇ」

「あー、アスタロトの事が怖くなったんでしょうね」

シュンッ、ブシャッ!!!

ケロちゃんはフルフルと話しながら、飛んできた小さな蜘蛛を闇刃(ダークカッター)で斬り落とすと、青色の血液がケロちゃんの頬部に付着する。

ブウンッっと虫の羽の音が聞こえ、ケロちゃんとフルフルが視線を向けると、脳虫が大きく口を開けてこちらに向かってくる姿が視界に入った。

フルフルは杖の持ち手部分を引き抜くと、鋭くい光る刃が現れ、体勢をを整えたフルフルは脳虫に剣となった剣を振り下ろす。

シュンッ!!!

「「キイエエエエッ!!!」」

ブシャッ!!!

脳虫の体が真っ二つに斬られ、奇声を上げながらポトポトと地面に落ちて行き、巨大化したタランチュラ化したバエルが吠える。

「ギイエエエエエッ!!!」

声に振動して地面や建物が地震のように揺れ、激しい声と揺れを感じ取った甘野芣婭は、体が重い状態のまま意識を取り戻した。

***

甘野芣婭 (17歳)
 
「ん…、ん?」

「芣婭様!目覚められましたか⁉ご気分は如何ですか?吐き気などはしますかっ?」

「え?芣婭がシーちゃんにお姫様抱っこされてる状況?今。気持ち悪くはないけどー、体が重くてって、
めちゃくちゃデカイ蜘蛛がいるんですけど⁉」

いつのまにか芣婭が寝ちゃってる間に、とんでもない事になってるんですけど⁉

え、何これ、この状況マジで何?

ギルベルト君やコンラット、ケロちゃんもベロちゃんも集合してるし、いかにもあのバカでかい蜘蛛と戦いますって感じなんですけど⁉

モンスターに遭遇した時のBGMが脳内で再生され、芣婭も戦闘に参加しなくてはいけないと気持ちが奮い立たされる。

「これは、芣婭の出番ですよね?シーさん」

「え、え?シーさん?」

「これって、みんなで協力して倒す流れですよね、そうですよね?ゲームだとそう言う展開になってきますよね」

「な、何をおっしゃってるんですか?まさかですけど、戦う気ですか⁉」

芣婭の言葉を聞いたシーちゃんは、目を大きく開いたままめっちゃ驚いていた。

今もこうして話してる間にも、ギルベルト君達は大きな蜘蛛を相手にしていて、魔法使ってる姿を見たら使いたくなっちゃうよねぇ!

「芣婭も1回は魔法使いたいもんっ!ねっ?お願い!」

「接近戦はだめです、あれはギルベルト様と団長だから出来るんですからね?芣婭様。遠くから援護射撃するのは、私が側に居る時にだけです。このままの状態で」

「分かった!簡単な呪文だけ教えて!」

「闇魔法の簡単な呪文…ですか、それなら闇撃(ダークショック)ですかね?比較的、消費魔力量も少ないですし」

シーちゃんの言葉を聞きながら、ズボンのお尻ポケットに入れて持ってきた芣婭専用の杖を取り出す。

「え、おねえちゃんって魔法使えるの⁉」

芣婭とシーちゃんの会話を聞いていたゼパ君が物凄く驚いてたけど、安心て下さい。

こう見えても、芣婭はやれば出来る子ですから安心して下さい、全国の皆さん。

「えへへ、実は今日が初めてなんだけどね!よーし、魔法使っちゃうよ!」

そう言って、芣婭は巨大な蜘蛛に杖先を向けた。
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