一年の片想い

出逢い

中学二年生になった春。新しいクラスの扉を開けると、自分の席の隣であろう男子が目に入った。バチッと目が合うと、その男子は「…隣の人?よろしく。」そう一言言い、文庫本に目を落とした。時が止まった気がした。何故だろうか。何とか「よろしく」。そう声を絞り出した。
そこからは大して何も話してはいないが胸の高揚が止まらなかった。新しい担任が入ってきて、ペアと自己紹介をして下さい、と言い放った。皆ガヤガヤと自己紹介を始める中、隣の男子が言った。「…崎原悠也。えっと、宜しく。」脳内で「崎原悠也」と言う名が反芻した。
「えっと、悠也…君、宜しくね。私は水無月瑞稀。」
「悠也で良いよ」
「じゃあ私も、瑞稀でいいよ、…悠也。」
「よろしく瑞稀。」


そこからは特に何事もなくペア学習だったりなどがあった。たった一日で悠也は、ダメなことはちゃんとダメだと言ってくれる人、ということが分かった。確かに胸の高揚はあるが、これが巷に言う恋というものなのかは未だに検討がつかないから、部屋のベッドに潜り込み、
「明日も頑張らなくちゃ。」
そう意気込んだ。

翌日、扉を開けると昨日のように悠也が文庫本を読んでいた。
「おはよう、瑞稀。」
「うん、おはよう……ねぇ、本、好きなの。」
「まあ、うん。そうだね。時間を忘れられる。」
「へぇ~、、、ねえ、読み終わったら言ってよ。一緒に図書室行こうよ。それで、おすすめ、教えて。」
「全然いいけど…放課後で良い?」
「…うん!全然!」
誘えた。嬉しい。やった。そんな気持ちが渦巻く。もう1人の友人、春奈がやってきて耳打ちした。
「ちょっと~、、、何嬉しそうにしてんのよ。春か?」
「ちょっと…。」
「兎も角!チャンスよチャンス!これはね、デートというものよ…!!」
「デッ、、、」
デート。確かに。二人で…放課後。図書室。これはデート言わずなんと言うのだろう。
着々と時が進むにつれ、私よりも春奈がソワソワする。長時間の休み時間に春奈がやってきて、
「放課後の最初、少しだけ時間空けて!デートなんだからおめかししなきゃ!」
そう言った。幸い悠也はいなかったから聞かれてなく、戻ってきてから、
「ごめん、放課後少しだけ待っててもらってもいい?」
と聞いた。悠也は、「全然いいけど」、と了承してくれた。
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