WINNER

「って言うかあいつとは付き合うとかそんなんじゃないから、ほら、よくあるワンナイト的な?流されて~とか、ほだされて~とか」


色んな理由をつけてもシてしまったものはシてしまったのだ。


「じゃぁ陽妃はその彼と結婚する気はないんだ」


け・っ・こ・ん!!?


私はぶんぶん首を横に振った。


「無理でしょ!相手はホスト……ても元だけど。女性を食いもんにしてるんだよ。そんなヤツと結婚とかありえないでしょ」


「いいじゃん、今は経営の方でしょ?現役ならちょっと考えもんだけど」


「良くない!そもそも私は絶対結婚したいわけじゃないんだから」


そう言い放つと敦美は分かりやすく「はぁ」と大きくため息を吐き


「そりゃ陽妃は誰が見ても美人だし、気が利くし、仕事デキるし?今はいいかもしれないけれど、ちやほやされるのは今だけの話なんだよ」


今だけ?


「今でももう十分賞味期限切れなの。分かる?この現実。いつまでも結婚はしないって言い張って、後で後悔したって遅いんだから」


敦美はフォークを私に突き付けてきて、突き付けられた私はフォークの先を見つめ寄り目。


後悔……かぁ。


いや、でも相手はあの(・・)九条だよ。結婚はおろか付き合うなんてこと、ヤツは望んでない筈。


「昨日の”アレ”は偶然、アクシデント、手近で手を打った。そんな所だよ」


「あのねぇ、15年間付き合ってて手近で手を打つってことある?その気になれば他にいくらでも女はいるでしょ」


よく喋る敦美の口は喋るペースと食べるペースが一緒で、見る見るうちにラザニアが消えていった。


同じメニューを頼んだ私のラザニアはすっかり冷めてしまって、薄く伸ばしたパスタ生地は固くなっている。それをフォークでつつきながら今朝の九条の言葉を頭の中で再生する。






『彼女面、していーんじゃねぇの?』




あれは、どういう意味なんだろう。


< 23 / 82 >

この作品をシェア

pagetop