朝の徒花
プロローグ
華の金曜日、繁華街の夜はいつも以上の活気に包まれていた。
飲んでいる多くの人々は仕事のストレスや日々の鬱屈とした感情を発散するように大きな声で笑い、語り、泣いている。
金曜日の夜は誰もが昼の仮面を脱ぎさり、普段見せない素直な自分を露わにする。
誰もがみんな、自分が楽しむことや自分を慰めることで一生懸命なので周りの事や目線など大抵気にしていない。
私はそんな煌びやかな喧騒を横目に、植込みの影に作ったツギハギダンボールの我が家のそばでひんやりとした空気を肌に感じながら寂しく晩酌をしている。
コンビニで買ったワンカップにエイヒレを入れて温めただけの一杯。
一口、一口、ちびちびと大切に味わっていく。
これが一番温まる。
働くことに疲れて、人間関係に辟易した私には未来の事などどうでも良く、毎日その日暮らしながらでもストレスなく過ごせる今のライフスタイルが気に入っている。
働いていた頃に比べて色のない生活かもしれないが健康的な日々を過ごしていて、普段は昼にバイトや図書館で時間を潰し、夜は食事などある程度のことを済ませば存外早くに寝てしまう。
娯楽に飢えている私は昼間に図書館でミステリーやラブストーリーを読む。
今日のようなお酒を飲む日は偶の事で、図書館で見た小説の興奮が冷めきらない時はこうして空を見上げたり道行く人を観察しながら酒を楽しむのだ。
そんな時だった、向こうから格好の娯楽がやってきた。
緑道公園の川を沿うように二人の男女が歩いている。
外灯に照らされた顔を様子見れば2人とも赤みがさしている。男の方が一回り年上のようだ。
時間は23時、おおかたそれまでこのカップルは二人で飲んでいて、時間も程よくなったので酔い覚ましで風に当たりながら駅に向かっているのだろう。
手を繋いだり、肩を抱き寄せあったりといった直接的なことはしていないが傍目に見ても二人の関係がただの仲の良い友人には見えなかった。
肩がくっつきそうな程の距離感と会話をしている時の表情からはそれぞれ相手に対する好意が滲み出ていた。
この歩道には川に付き出すようにしてデッキが設けられている。
私がいる植込みのすぐ側だ。男女はデッキまで来ると立ち止まった。
男からは何か話を切り出すだろう、そんな雰囲気が読み取れ、思わず次の展開が気になり息を潜めて二人を見守ることにした。
明かりに照らされたデッキ。
手を見れば2人とも左手薬指には反射して光るものがある。
指輪をしているが婚約者からのプロポーズ?
それとも別れ話か?
そろそろか、いつまで待たせるのか。
何を話し始めるのか気になって仕方がない。
そして、迷うように男はついに口を開いて女との馴れ初めや今までの思い出を懐かしそうに話し始めた。
それらはその後の言葉が男の本心だと改めて伝えるためのエッセンスだったのだろう。
私は息を潜め、その話に耳を傾けた……
華の金曜日、繁華街の夜はいつも以上の活気に包まれていた。
飲んでいる多くの人々は仕事のストレスや日々の鬱屈とした感情を発散するように大きな声で笑い、語り、泣いている。
金曜日の夜は誰もが昼の仮面を脱ぎさり、普段見せない素直な自分を露わにする。
誰もがみんな、自分が楽しむことや自分を慰めることで一生懸命なので周りの事や目線など大抵気にしていない。
私はそんな煌びやかな喧騒を横目に、植込みの影に作ったツギハギダンボールの我が家のそばでひんやりとした空気を肌に感じながら寂しく晩酌をしている。
コンビニで買ったワンカップにエイヒレを入れて温めただけの一杯。
一口、一口、ちびちびと大切に味わっていく。
これが一番温まる。
働くことに疲れて、人間関係に辟易した私には未来の事などどうでも良く、毎日その日暮らしながらでもストレスなく過ごせる今のライフスタイルが気に入っている。
働いていた頃に比べて色のない生活かもしれないが健康的な日々を過ごしていて、普段は昼にバイトや図書館で時間を潰し、夜は食事などある程度のことを済ませば存外早くに寝てしまう。
娯楽に飢えている私は昼間に図書館でミステリーやラブストーリーを読む。
今日のようなお酒を飲む日は偶の事で、図書館で見た小説の興奮が冷めきらない時はこうして空を見上げたり道行く人を観察しながら酒を楽しむのだ。
そんな時だった、向こうから格好の娯楽がやってきた。
緑道公園の川を沿うように二人の男女が歩いている。
外灯に照らされた顔を様子見れば2人とも赤みがさしている。男の方が一回り年上のようだ。
時間は23時、おおかたそれまでこのカップルは二人で飲んでいて、時間も程よくなったので酔い覚ましで風に当たりながら駅に向かっているのだろう。
手を繋いだり、肩を抱き寄せあったりといった直接的なことはしていないが傍目に見ても二人の関係がただの仲の良い友人には見えなかった。
肩がくっつきそうな程の距離感と会話をしている時の表情からはそれぞれ相手に対する好意が滲み出ていた。
この歩道には川に付き出すようにしてデッキが設けられている。
私がいる植込みのすぐ側だ。男女はデッキまで来ると立ち止まった。
男からは何か話を切り出すだろう、そんな雰囲気が読み取れ、思わず次の展開が気になり息を潜めて二人を見守ることにした。
明かりに照らされたデッキ。
手を見れば2人とも左手薬指には反射して光るものがある。
指輪をしているが婚約者からのプロポーズ?
それとも別れ話か?
そろそろか、いつまで待たせるのか。
何を話し始めるのか気になって仕方がない。
そして、迷うように男はついに口を開いて女との馴れ初めや今までの思い出を懐かしそうに話し始めた。
それらはその後の言葉が男の本心だと改めて伝えるためのエッセンスだったのだろう。
私は息を潜め、その話に耳を傾けた……
< 1 / 8 >