エタってしまった小説の世界で、ヤンデレ化した勇者が離してくれません。~聖女と呼ばれ執愛されていますが……読者です!~

①勇者バルトレッドは聖女を召喚した……本当に?

砕けた石柱。足元で青白く輝く謎の模様。
それから一目で釘付けになるほどの西洋の美丈夫。

――なんて、綺麗な人だろう。

足元の光が反射してアメジストの瞳が複雑に輝き、まるで全ての色を吸い込むような銀色の髪と、透明度の高い白い肌からは神聖な雰囲気が漂っている。

しかし神の最高傑作かと思わせるほどの造形の美しい男と目が合った瞬間、ぞわりと素肌が粟立った。
形良い薄い唇から覗く歯列が一瞬、獲物を目の前にした飢えた獣の如く牙を剥いたような気がしたのだ。

人間、直感というのはなまじ馬鹿にならない。

綺麗だけど、何か変。

この感覚の答えを直後に理解する。

なにせその男は目尻を和らげると滑らかな所作で跪き、恭しく首を垂れるやうっそりと頭を上げ陶然と紡いだのだ。

「――あぁ、聖女様……やっとお会い出来ました……愛しています。どうか俺を最後まで連れていって下さい」

いきなり、何を言っているのだろう。
しかも歪む口元と荒い吐息が隠しきれていない。

いくら完全無欠の美麗な顔で言われても、初対面で息を荒げて愛を語る男性は不審者だ。

そもそも不審な台詞以前に見知らぬ場所に居ること自体、まったくもって理解が追いつかなかった。
なにせ先ほどまで終電の閑散とした電車に居たはずなのだから。


恍惚とした表情を浮かべる男に、ただただ言葉を失っていると、いきなり手を取られ指先に口付けられる。

思わず腕を引いて振り払えば、傷ついたように眉尻を下げ不安気な声が響いた。

「聖女さま……?」

不安なのはこっちの方だ。
なんなら気品あるアーモンド型の瞳が縋るように見つめてきて、若干の恐怖すら感じる。

端正な顔を前にしているというのに、感じるのは“この男、ヤバそう”というシグナルだった。


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