闇に溺れて、君を奪う。
「ばか。今夜は出歩くなって言っただろ」

「でも、コンビニに行くだけで……」

「その“だけ”が危ねぇんだよ」

低く叱る声なのに、乃愛を包むみたいにやさしい。
その矛盾に、胸がきゅっとなる。

玲央は乃愛を自分のすぐそばに引き寄せると、周囲を鋭く見渡した。
その視線の先、暗がりの向こうで人影が動く。

乃愛の肩がびくっと震えた。

「……やっぱり、いたか」

玲央の声が一気に冷える。

次の瞬間、物陰から数人の男たちが姿を現した。
星闇と張り合っている別チームの連中だと、乃愛にもすぐわかった。

「へえ。総長サマが女連れとはな」

「その子、弱みになるんじゃねぇの?」

下卑た笑い声に、乃愛の指先が冷たくなる。
けれど玲央は、そんな乃愛を背中へ隠すように立った。

「乃愛」

「っ、なに……?」

「目、閉じてろ」

「え……?」

「大丈夫。おまえには指一本触れさせねぇから」

その言葉は、夜よりも深く甘かった。

次の瞬間、玲央が動く。
一歩踏み込んだだけなのに、空気が変わった。

怖い。
なのに、目が離せない。

玲央は圧倒的だった。
相手を追い詰める視線も、鋭い動きも、全部がこの街の王みたいで。
あっという間に数人をひるませてしまう。

けれど、そのとき。

玲央の背後にいたひとりが、乃愛へ手を伸ばした。

「きゃ……っ」

声を上げた瞬間、その手が乃愛に届く前に、別の影が割って入る。

「うちの姫に触ろうとするとか、命知らずにもほどがあるっしょ」

ふわりと笑いながら男の腕をひねり上げたのは、明るい茶髪の青年だった。

幹部の朝霧 湊。
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