千代子花火の12週間の恋

  彼の顔を見て、少し驚いた……


  [イケメンじゃん……]


 背が高い男性で……185くらいはありそう……ピアスをつけていて……グレーに染めた髪……染め直していないせいで黒髪が少し混じっている……黒いマスクもつけている。


 イケメンとは言っても……あくまで私の好みでのイケメンってだけで……マンガに出てくるヤンキー系とか、ホストみたいなイケメンではない……


  「こんにちは……」


 私は声をかけた……


  「あ……こんにちは……」


 意外と気さくな感じだ……


  「あの……さっき、担当編集の人と言い合ってるの、たまたま聞こえちゃって……それで……謝りたくて……」


 それを聞いた彼は、特に表情を変えなかった……


  「ああ……謝らなくていいですよ……むしろ聞いてもらえてよかったです……」


 声にはかなりイライラが滲んでいた……まあ……あんなひどい担当編集のせいで、私たちみたいな小さな作家志望の夢が傷つけられたんだから、怒って当然だよね……


  「あなたは……漫画家になりたいんですか?」


 私は尋ねた……運ばれてきたばかりのカフェオレを啜りながら……


  「まあ……そうですね……僕、子供の頃からずっと漫画家になりたかったんです。でも絵が下手なので……代わりにストーリーを書く練習をしていて……」


  「へ……」


 私は彼の原稿を手に取り、さっと目を通した……


 読み終えると……私は思わず泣いてしまった……


 彼が書いたストーリーは……売上が百万部規模のロマンス漫画と同じくらい……いや……もしかしたらそれ以上に深いものだった。


  「あ……大丈夫ですか?」


 彼はティッシュを差し出してくれた……紳士的だなあ……


 「いいえ……ただ、なんというか……読んでたら、洋波(ようなみ)の12週間だけの関係が、すごく分かる気がして……」
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