加納欄の入院 シリーズ32シーズン4
その日の夜。

「欄ちゃん」

苫利先輩が、小さくあたしを呼んだ。

「なんですか?」

「トイレ」

「はい」

この個室。

広いし、設備も悪くない。

ただ、安い部屋だからトイレだけは外にある。

あたしは苫利先輩を支え、病室のドアを開けた。

昼間とは、まるで違う。

照明の落とされた長い廊下。

ナースステーションの明かりだけが、やけに白く浮かんで見える。

遠くで、何かが動く音がした。

カラ……カラ……。

誰かが押しているワゴンの音だろうか。

足音ひとつでも、妙に大きく響く。

「ゆっくりでいいですよ」

「悪いな」

「彼女ですから」

盗聴器を意識して、少し大きめに言った。

そして二人で、静まり返った夜の廊下を歩き出した。
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