最強男子の過保護な溺愛が止まりません!
第六話 可愛い後輩は、ぜんぶ知っている
暗い資料室の中。
閉まった扉の向こうからは、誰かが走る足音がかすかに聞こえてくる。
でもそれより今は、目の前の存在のほうがずっと危険だった。
「いおりくん……?」
名前を呼ぶと、天瀬いおりくんはにこっと笑った。
暗がりの中でも、その笑顔はやわらかくて可愛い。
なのに、どうしてこんなに背筋が寒いんだろう。
「声、大きいです」
そっと人差し指を唇の前に立てられる。
「見つかったら困るので」
「こ、困るって……」
「先輩、今たぶん氷河先輩たちに追われてる人を見ましたよね」
「えっ」
私は目を見開いた。
なんで知ってるの。
「やっぱり」
いおりくんはくすっと笑う。
「わかりやすいなぁ」
「な、なんでそんなこと……」
「僕、けっこう何でも見てるので」
ふわっとした口調。
でもその一言に、ぞわりとした。
何でも見てる。
それってつまり。
「先輩が誰と仲いいとか、誰を警戒してるとか、何に気づきかけてるとか」
いおりくんが一歩近づく。
私は反射的に一歩下がった。
でもすぐ背中が古い棚にぶつかって、それ以上逃げられない。
「ぜんぶ、見てました」
「……っ」
喉が鳴る。
近い。
昼間の無邪気ないおりくんとはまるで違う。
笑っているのに、逃がす気がまったくない顔だ。
「どうして……」
「何がですか?」
「どうして、こんなところにいるの」
私の問いに、いおりくんはほんの少しだけ首をかしげる。
「先輩が危なっかしいから、ついてきただけです」
「嘘」
思わず口から出た。
一瞬だけ、空気が止まる。
「……へえ」
いおりくんの笑みが深くなる。
「先輩でも、そういう顔するんですね」
「だって、いおりくん変だもん」
「変」
「いつもと違う」
こわい。
でも、目をそらしちゃだめな気がした。
「可愛い後輩のふりしてる」
その瞬間。
いおりくんの目が、すっと細くなった。
「ふり、じゃないですよ」
甘い声。
でもそこに混じる温度は低い。
「先輩の前では、ちゃんと可愛い後輩です」
「……前では、ってことは」
「そういう細かいとこ、気づかなくていいのに」
困ったように笑いながら、いおりくんは私の髪にそっと触れた。
ゆるく結んだツインテールの毛先を指に巻きつける。
「ほんと、無防備」
「ひゃっ」
「その反応、他の人にもしてるんですか」
「え?」
「氷河先輩とか、鳳条先輩とか、朔さんとか」
名前が並ぶたび、声が少しずつ低くなる。
「みんな、先輩のことばっかり見てる」
暗闇の中で、いおりくんの顔が近づく。
「ずるいです」
「な、何が……」
「先輩は何もわかってないくせに、簡単に人の心を持っていくところ」
どくんと胸が鳴った。
この言い方は、まるで。
「いおりくん、もしかして」
「はい」
遮るように答えられる。
「好きですよ。先輩のこと」
「……え」
頭が真っ白になる。
好き。
今、好きって言った?
「な、なんでそんなさらっと」
「さらっとじゃないです」
いおりくんの声が、少しだけ揺れた。
「ずっと我慢してたんですから」
その言葉に、思わず目を見開く。
え。
ずっと?
「でも先輩、鈍いから」
いおりくんが私の頬に触れる。
指先はやさしいのに、その目は全然やさしくない。
閉まった扉の向こうからは、誰かが走る足音がかすかに聞こえてくる。
でもそれより今は、目の前の存在のほうがずっと危険だった。
「いおりくん……?」
名前を呼ぶと、天瀬いおりくんはにこっと笑った。
暗がりの中でも、その笑顔はやわらかくて可愛い。
なのに、どうしてこんなに背筋が寒いんだろう。
「声、大きいです」
そっと人差し指を唇の前に立てられる。
「見つかったら困るので」
「こ、困るって……」
「先輩、今たぶん氷河先輩たちに追われてる人を見ましたよね」
「えっ」
私は目を見開いた。
なんで知ってるの。
「やっぱり」
いおりくんはくすっと笑う。
「わかりやすいなぁ」
「な、なんでそんなこと……」
「僕、けっこう何でも見てるので」
ふわっとした口調。
でもその一言に、ぞわりとした。
何でも見てる。
それってつまり。
「先輩が誰と仲いいとか、誰を警戒してるとか、何に気づきかけてるとか」
いおりくんが一歩近づく。
私は反射的に一歩下がった。
でもすぐ背中が古い棚にぶつかって、それ以上逃げられない。
「ぜんぶ、見てました」
「……っ」
喉が鳴る。
近い。
昼間の無邪気ないおりくんとはまるで違う。
笑っているのに、逃がす気がまったくない顔だ。
「どうして……」
「何がですか?」
「どうして、こんなところにいるの」
私の問いに、いおりくんはほんの少しだけ首をかしげる。
「先輩が危なっかしいから、ついてきただけです」
「嘘」
思わず口から出た。
一瞬だけ、空気が止まる。
「……へえ」
いおりくんの笑みが深くなる。
「先輩でも、そういう顔するんですね」
「だって、いおりくん変だもん」
「変」
「いつもと違う」
こわい。
でも、目をそらしちゃだめな気がした。
「可愛い後輩のふりしてる」
その瞬間。
いおりくんの目が、すっと細くなった。
「ふり、じゃないですよ」
甘い声。
でもそこに混じる温度は低い。
「先輩の前では、ちゃんと可愛い後輩です」
「……前では、ってことは」
「そういう細かいとこ、気づかなくていいのに」
困ったように笑いながら、いおりくんは私の髪にそっと触れた。
ゆるく結んだツインテールの毛先を指に巻きつける。
「ほんと、無防備」
「ひゃっ」
「その反応、他の人にもしてるんですか」
「え?」
「氷河先輩とか、鳳条先輩とか、朔さんとか」
名前が並ぶたび、声が少しずつ低くなる。
「みんな、先輩のことばっかり見てる」
暗闇の中で、いおりくんの顔が近づく。
「ずるいです」
「な、何が……」
「先輩は何もわかってないくせに、簡単に人の心を持っていくところ」
どくんと胸が鳴った。
この言い方は、まるで。
「いおりくん、もしかして」
「はい」
遮るように答えられる。
「好きですよ。先輩のこと」
「……え」
頭が真っ白になる。
好き。
今、好きって言った?
「な、なんでそんなさらっと」
「さらっとじゃないです」
いおりくんの声が、少しだけ揺れた。
「ずっと我慢してたんですから」
その言葉に、思わず目を見開く。
え。
ずっと?
「でも先輩、鈍いから」
いおりくんが私の頬に触れる。
指先はやさしいのに、その目は全然やさしくない。