最強男子の過保護な溺愛が止まりません!

第九話 黒コートの男は、甘く危険に笑う

校門の外。
 夜の静けさの中で、その男だけが異質だった。

 黒いロングコート。
 冷たい目。
 そして、人をからかうみたいな薄い笑み。

「ローズへようこそ、お姫様」

 その言葉に、背筋がぞくりとした。

「……っ」

 私は無意識に、氷河ノ先輩の背中に少しだけ身を寄せた。
 すると先輩の肩がわずかに動く。
 たぶん気づかれた。
 恥ずかしいのに、今は離れたくなかった。

「名乗れ」

 氷河ノ先輩の声は、氷みたいに冷たい。

「そんな怖い顔しないでよ」

 男は軽く両手を上げてみせた。

「今日はほんとに挨拶だけだって」

「信用できるか」

「できないだろうね」

 あっさり言って、男はふっと笑う。

「でも嘘は言ってない」

 視線が、私へまっすぐ向く。

「君に会ってみたかったんだ。相沢胡桃」

「……どうして、私の名前を」

「知らないと思った?」

 その声音はやわらかい。
 でも、その奥にあるものはぞっとするくらい冷たい。

「君、いま学園でいちばん注目されてるから」

「ふざけるな」

 蓮くんが一歩前に出る。

「何が目的や」

「目的?」

 男は少しだけ考えるふりをしたあと、くすっと笑った。

「今は観察かな」

「観察……?」

 思わずつぶやくと、男は嬉しそうに目を細める。

「そう。その反応、可愛いね」

「っ……!」

 ぞわっと鳥肌が立つ。
 褒められた感じなんて全然しない。
 獲物を見つけたみたいな目だ。

「てめえ」

 氷河ノ先輩の声が、ぐっと低くなる。

「胡桃を見るな」

「無理だよ」

 男は肩をすくめた。

「だって彼女、想像よりずっと面白そうだ」

「面白そう、だと?」

「うん」

 男は一歩だけ近づく。
 その瞬間、氷河ノ先輩たち全員の空気が鋭く変わった。
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