最強男子の過保護な溺愛が止まりません!

第十話 帰り道、近すぎる体温

 玲央が消えたあとも、しばらく誰も動かなかった。

 夜風が冷たい。
 でも、それ以上にさっきの言葉が頭から離れない。

 君はまだ、自分がどれだけ特別か知らない。

「胡桃」

 低い声に顔を上げると、氷河ノ先輩がすぐ目の前にいた。

「帰るぞ」

「……はい」

 それしか言えなかった。
 いろいろ考えたいのに、先輩に手を取られているだけで心臓が落ち着かない。

 校門から少し離れたところで、蓮くんがふっと息をついた。

「今日はさすがに送ってくわ」

「えっ、そんな、みんなでですか?」

「当たり前やろ」

 蓮くんが呆れたように笑う。

「敵がわざわざ顔見せに来たんやで」

「でもそれじゃ目立ちます」

「もう今さらだ」

 朔の一言が重い。
 たしかにその通りすぎて、反論できない。

「僕も行きます」

 いおりくんが当然みたいに言う。

「先輩、今夜は絶対一人にしたくないので」

「……ありがとう」

 そう返すと、いおりくんは少しだけ目をやわらかくした。

「そういう素直なとこ、反則です」

「な、何が!?」

「自覚ないのやばいですね」

「いやそれ今言う!?」

 思わず声が上ずる。
 するとすぐ隣から、氷河ノ先輩の低い声が落ちた。

「いおり」

「はい?」

「黙れ」

「こわ」

 でもいおりくんは全然ひるまない。
 むしろ少し楽しそうだった。

 そのまま歩き出した帰り道。
 なぜか私は、真ん中に挟まれる形になっていた。

 右に氷河ノ先輩。
 左に朔。
 少し後ろに蓮くんといおりくん。
 完全に囲まれてる。

「……あの」

「何だ」

 氷河ノ先輩がすぐ返す。

「これ、ちょっと大げさじゃないですか」

「全然」

「いや、どう見てもです」

「足りないくらいだ」

「足りないの!?」

 思わず見上げると、先輩は真顔だった。
 本気で言ってる。
 この人、本当にどこまで過保護なの。

「でも」

 私は小さく息を吐く。

「ありがとう、ございます」
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