最強男子の過保護な溺愛が止まりません!

第十五話 作戦会議と、近すぎる独占欲

図書準備室を出たあとも、胸の奥はまだざわざわしていた。

 母のこと。
 ローズのこと。
 旧温室に残された証拠。

 それなのに。
 腕に残る氷河ノ先輩の体温まで思い出してしまって、頭の中が全然落ち着かない。

「……顔、赤い」

 廊下を歩きながら、朔がぽつりと言った。

「えっ!?」

 思わず両手で頬をおさえる。
 そんな私の隣で、氷河ノ先輩がぴたりと足を止めた。

「朔」

「事実だろ」

「言わなくていい」

「なんで氷河先輩が焦るんですか」

 後ろから合流したいおりくんが、楽しそうに笑う。

「何かあったんです?」

「何もない」

 氷河ノ先輩が即答する。

「その速さ、逆に怪しいんですけど」

「うるさい」

「胡桃先輩、泣いてました?」

 その一言に、先輩たちの空気がわずかに変わる。
 私はあわてて首を振った。

「な、泣いてない……ちょっとだけです」

「ちょっとは泣いたんやん」

 蓮くんが呆れたように笑う。
 でもその目はちゃんとやさしい。

「九条に何かされた?」

「違います!」

 今度は大きめの声で否定してしまった。

「えっと、その……写真を見て、びっくりして」

「写真?」

 いおりくんの表情が少しだけ鋭くなる。
 私はうなずいて、母のことをみんなにも簡単に話した。

 この学園の卒業生だったこと。
 昔のローズに巻き込まれていたこと。
 そして、旧温室に証拠があるかもしれないこと。

 話し終えるころには、全員の顔つきが変わっていた。

「なるほどな」

 蓮くんが息をつく。

「だから胡桃ちゃんが狙われとるわけか」

「断定はまだできない」

 氷河ノ先輩が低く言う。

「でも可能性は高い」

「旧温室、今日行くんですか」

 いおりくんが聞く。

「行く」

 答えたのは私だった。

 みんなが一斉にこっちを見る。

「……行きたいです」

「胡桃」

 氷河ノ先輩の声が少しだけ強くなる。

「危ない」

「わかってます」

「わかってない」

「わかってます!」

 思わず言い返す。
 でも、すぐに少しだけ声を落とした。

「怖いです。危ないのもわかってる」

「なら」

「でも、今行かないと、なくなるかもしれないんですよね」

 九条先輩の言葉が本当なら、向こうも動く。
 だったら先に行かなきゃいけない。

「……私、自分のことをちゃんと知りたい」

 その言葉に、先輩はしばらく黙った。

 やがて、小さく息をつく。

「ひとりでは行かせない」

「それはもちろんです」

「俺がついていく」

「それももちろんです」

「俺も」

 朔が短く言う。

「僕も行きます」

 いおりくんがすぐに続く。

「俺もに決まっとるやろ」

 蓮くんが肩をすくめる。

「……全員なんですね」

「当たり前だ」

 氷河ノ先輩が即答する。

「お前を危険な場所に行かせるなら、なおさらだ」

 その言い方に、また胸があたたかくなる。
 でも同時に、ちょっとだけ困る。

「それだと、すごく目立ちません?」

「目立つ前に終わらせる」

 先輩は真顔だった。
 本気だ。

 その日の放課後。
 使われていない旧校舎の空き教室を借りて、簡単な作戦会議が始まった。
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