きみと、どうかしてる。
いつ来ても同じ席に座っていて、いつ見ても騒がしい後ろ姿が、初めて言葉を交わしたあの日。
「………」
「………」
一人ポツンと静かに俯いていて、店内の騒音がいつもの3割減に感じたのを今でも覚えてる。
例えばあの時、俺の隣に誰かいれば。
集合時間を勘違いしたせいで、暇を持て余すことが確定していなければ。
何度となく見かけるその後ろ姿に、興味を持っていなければ。
「………」
「オネーサン、今日は一人?」
あんなナンパ師みたいな台詞、言わなくて済んだのに。
仕事中の店員捕まえて延々と喋ってる女なんて、見た目も中身も変わった女だろうと。寂しさを紛らわせるために来ているんだろう、と。
高をくくって話しかけたものだから。
「……一人でも、忙しいんですけど」
あからさまに嫌そうな声色で、拒絶の言葉を吐きながらゆっくりと振り向いた女の顔が。
そこそこ…いや、かなり可愛くて。
まさかの答え合わせの結果に、さらに興味が湧いてしまったことは言うまでもない。
あの時の選択が正解か不正解かは、まだ分からないけど。
……大変なやつに関わってしまったことは、間違いない。
「――ね、別にそこまでムカついたわけじゃないんだよ?
あたしだけなら百歩譲ってあげたけど、コンソメちゃんがさぁ!ボロボロなわけよ!!」
「………」
会ってもくだらない話をだらだらと続けるだけで、自分のことはほとんど話さなくて、俺の興味を満たしてくれることはない。
けどもう今は、何を話すとか、何をするとか。
そういうことはどうでも良くて。
今以上を求めることも、求められることもない、一見無意味にも思えるこの時間が、いつの間にか心地良いものになっているのは確か。
…こんなこと、本人には絶対。
口が裂けても言えないけど。