婚約者の溺愛が重すぎて、普通の恋ができません!

 私は、ずっと恋に憧れていた。

 漫画や小説の中では、最初はなんとも思っていなかったふたりが少しずつ互いを意識するようになり、徐々に恋心を募らせていた。

 相手の何気ない言葉ひとつに一喜一憂して、やがてどちらかが勇気を振り絞って告白して、好き同士になる。
 それから初めて手をつないで、ふたりきりでデートをして、もっと好きになった先でキスなんてして……そんなふうに、恋人同士になっていく。

 たったそれだけの、ごく普通の恋愛を、私は一度でいいから自分の人生でも経験してみたかったのだ。

 高校時代だって大学時代だって、少しくらい「いいな」と思う人がいなかったわけではないし、向こうから声をかけてもらったことだってあった。

 しかし、そのたびにどこから嗅ぎつけてくるのかアイツが現れて、私の淡い恋の芽を、芽吹くどころか土から顔を出す前にことごとく踏み潰し、燃やしてきた。

 けれど、もうここではその心配はない。

 私は東京から遠く離れたこの街にいて、アイツは私がどこに住んでいるのかも、どこの会社で働いているのかも知らないのだ。
 これからは誰を好きになろうが、誰と食事に行こうが、誰と付き合おうが、全部私の自由!

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