推しが彼氏で、彼氏が推しで!? -爆イケアイドルの裏の顔は執着魔-
二章 すれちがい
無事未央の推しの特典会も終わり、帰路についていた。
「ふー…今日も翠君かっこよかったなぁ!!莉乃はどうだった?」
「…」
「莉乃?どうしたー?」
「ん!?あ!ごめんごめん!すごいかっこよかったよ!」
「それならいいんだけどさぁ」と未央が推しについて語っている声が聞こえる。
(あぁ…だめだ。竜司に気づいてもらえなかったことに対してなんでこんなに心が苦しいの?これじゃあ私が竜司のこと好きみたいじゃん…涙出そう。いや我慢して自分…)
午後のファミレスは学生でにぎわっている。
にぎやかな声や、カップルの会話、未央の推しへの愛すべてが、今の莉乃の心にはしんどさがあった。
「私ってホント何やってんだろう…」
俯きながらとぼとぼと歩いていると、後ろからこちらへ走ってくるような足音が近づいてきた。
「__莉乃!」
聞き覚えのある声がしてふと振り返ると同時に、ガシッと大きな手で強く手首をつかまれた。
「竜司…?…なんで…?」
「やっと…やっと会えた。」と莉乃を抱きしめる。
竜司の心臓の音がやけに大きく聞こえるドクンドクン__
きっと竜司は走ってきたからであろう。でも私は…?
「お前すごい心臓の音大きい。」
「はああ!?久しぶりに会ってそれ!?またバカにしに来たわけ!?
どうせバカにしてた女が自分のライブに来てて面白くてまたからかいに来たんでしょ
?どうして彼氏にも、竜司にも馬鹿にされなきゃいけないの!」
大粒の涙が流れる。
今まで我慢してきたダムが決壊したようだった。
「未央ちゃん、ごめん私急用があるからもう帰るね。」
そういうと莉乃は足早に、ファミレスを後にした。
(未央ちゃんに悪いことしたなぁ…でもあの場にいたらきっと泣いちゃいそうだった。)
SNSのストーリーを見ても、圭吾(彼氏)はまた女の人がいる飲み会だし…
もう本当に今日はついてない日だなあ…
「……バカになんかしてねぇよ。好きで好きで、9年間頭おかしくなりそうだったのに……分かってねぇの?」
竜司が、抱きしめていた腕により力を込める。
「うっ…苦しい…わかんないよ…
あんだけ人のことバカにしてさ……それからずっと髪もストレートにしか出来ないし…。」
「それに私には彼氏がいるし…」
「お前に彼氏がいるとか知らない。居てもそんなお前を悲しませるやつ奪い取るだけだから。」
ドクン…
胸が高鳴り、鼓動が早まる。
ライブの時とは違う。
「…竜司だって私の事バカにして傷つけてくるじゃん……一緒だよ。」
「ッ…」
「一緒にすんなバカ。」
「またバカって!!!」
「…バカだろ。あれは好きだからこそのからかいだったし。その後俺すぐ引っ越したし、伝えられなった。それは悪い。」
バッと莉乃が竜司を引き剥がす。
「そんなのまたライブに来て欲しいだけの営業でしょ…!今となってはどうとでも言える。あの時の傷付いた私が癒える訳じゃない。やめて。私の前に現れないで……」
そう呟き、莉乃は走った。
ただ、暗くなった人気のない道にぽつんっと残された竜司だけを残して。
「……営業……ねぇ。営業でこんなことするかよ。本当にバカだなあいつ。」
―――
ハァ…ハァ…
どれくらい走っただろうか。
竜司が来るなんて思いもしなかった。
(竜司が、私のことを好き…?そんな感じ1度もなかったじゃん…。てか、急に言われても困るし…圭吾は今どうしてるんだろう…)
ふとSNSに返信があるか見てみるが、返信はない。
「はぁああ…返信したのお昼前だよ…?ほかの女の子には返す暇あるのに私にはないんだね。」
もういいや…疲れたから今日は寝よう。
明日になったら考えよう…。
(なんであんなに竜司にきつく当たっちゃったんだろう…
もうかなり昔の話だし、ストレート髪も好きだし、そんなに巻かないだけなんだけどさ……なんと言っても楽!コテとか難しくて逆に変になるまである。)
今度会ったら謝ろうかな…