秋の終わりの交差点〜王子様の横顔と、ちょっと苦いコーヒーと〜
プロローグ
時刻を確認すると19時50分を回っていた。もう50分以上も待っていることになる。
副島糸恵は、カフェの窓際の席でスマホの画面を眺めていた。外の冷たさがガラス越しに伝わり、少しひんやりとする。11月も残すところ5日となった今日の気温は12月下旬並みだったのだそうだ。残り少なくなったコーヒーからはすでに湯気も香りも立たない。
仕事を終え待ち合わせ場所へ向かっている途中に、急なトラブルで少し遅れそうだから、どこか暖かい所で待っていてくれるようにと連絡があったのだった。
思わずため息が漏れる。
見るともなく外に目をやった。
すぐ前の交差点では、赤信号に足止めされた人たちが、肩をすくめたりポケットに手を突っ込んだりして色が変わるのを待っている。
突然、トク、と心臓が脈打った。
その中に、彼はいた。向こうを向いて、黒っぽいコートを着て立っていた。彼が横を向かなかったらきっと気づかないままだったのだろう。
微かな痛みの混じった、愛おしさにも似た懐かしさ。頭をもたげつつあったイライラは、込み上げるそんな感情に一瞬にして追いやられた。
* * *
副島糸恵は、カフェの窓際の席でスマホの画面を眺めていた。外の冷たさがガラス越しに伝わり、少しひんやりとする。11月も残すところ5日となった今日の気温は12月下旬並みだったのだそうだ。残り少なくなったコーヒーからはすでに湯気も香りも立たない。
仕事を終え待ち合わせ場所へ向かっている途中に、急なトラブルで少し遅れそうだから、どこか暖かい所で待っていてくれるようにと連絡があったのだった。
思わずため息が漏れる。
見るともなく外に目をやった。
すぐ前の交差点では、赤信号に足止めされた人たちが、肩をすくめたりポケットに手を突っ込んだりして色が変わるのを待っている。
突然、トク、と心臓が脈打った。
その中に、彼はいた。向こうを向いて、黒っぽいコートを着て立っていた。彼が横を向かなかったらきっと気づかないままだったのだろう。
微かな痛みの混じった、愛おしさにも似た懐かしさ。頭をもたげつつあったイライラは、込み上げるそんな感情に一瞬にして追いやられた。
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