嗚呼、愛しのアフロディーテ

第一話 懇願

朝、学校へ行くと靴箱に手紙が入っていた。

シンプルなオフホワイトの便箋に『放課後、裏庭へ来てください』と書かれてあった。


私──柊あかり(ヒイラギアカリ)は至って地味な高校二年生で、呼び出しなんてされたことは一度もない。

髪も肩につくくらいのボブヘア。

突出したパーツがあるわけでもない薄い顔。


そんな私に、手紙……。


差出人は──坂本真紘(サカモトマヒロ)。

隣のクラスの、暗くて地味な男子生徒……。

前が見えているのかわからない長い前髪。

分厚い眼鏡に、日焼け知らずの白い肌。


そんな坂本くん、全く知らない人ではなくて。
話したことは少しだけある。

図書委員のときに私が受付をやっていて、本の貸し出しの際にひと言、ふた言。

でもそれは業務的なものにちょっとした雑談を交えた、なんてことないもの。


「その本の続き、来月入るよ」
「……ありがとうございます」


ほんと、そのくらい。


良くも悪くも呼び出されるほどの関係は築けていないのだけれど。

まあ。
放課後、裏庭へ行ってみればわかるよね……。


そう思いながらも少しだけドキドキしつつ、きっかり六時間分の授業を受けた。
< 1 / 15 >

この作品をシェア

pagetop