君の手を掴むための遠回り
1学期の終業式を目前に控えた放課後。
俺の卑怯な逃げ道を完全に打ち砕く出来事は、校舎裏の木陰で訪れた。
部活の用事で通りかかった時、茂みの向こうから聞き覚えのある声が聞こえて足を止める。
そっと覗き込むと、瑠華と他学年の先輩が立っていた。
「……ごめんなさい。私にはずっと忘れられない人がいるんです。だから、誰とも付き合えません」
「その『忘れられない人』って、噂の幼なじみのこと? あいつには彼女がいるだろ。いつまで待つつもりなんだよ」
「……叶わなくてもいいんです。私の中の『一番』は、あの人しかいないから」
────ドン、
と胸の奥を鈍器で殴られたような激痛が走った。
9年間どころか、俺が他の女子と手を繋ぎ、抱き締め、ペアリングをつけて浮かれている今この瞬間も、瑠華はただ一人で俺との約束を守り続けていたのだ。
(汚い……俺は、どこまで最低なんだよ……っ)
焦って砂利を踏み鳴らしてしまった音に瑠華が振り返り、青ざめて立ち尽くす俺と目が合った。
瑠華の瞳からポロポロと涙がこぼれ落ちる。
「…聞かないでよ、幸平。私から離れて……っ!」
走り去っていく瑠華の背中を、俺は追いかけることすらできなかった。