君の手を掴むための遠回り

周囲から歓声が上がるたび、俺の胸の奥には冷たい空虚感だけが広がっていった。


​「ねえ、神楽くん……? 本当に楽しんでる?」


​ふと、彼女が足を止め、不安そうに俺の顔を覗き込んできた。


​「え……? 楽しんでるよ、すごく綺麗だし」

​「嘘……。手、全然温かくないよ。私といるのに、誰のこと考えてるの?」


​彼女の指が、繋いだ手元で力なく緩んでいく。

自分以外の誰かを追っている俺の視線に、彼女もまた感づいていたのだ。

それでも俺は
「そんなことないよ」
と嘘を重ね、彼女の手を握り直すことしかできなかった。

​人混みの中で触れ合う肌の熱も、賑やかなお祭りの熱気も、俺の心を温めてはくれない。

瑠華を裏切った罪悪感と、彼女を利用している卑劣さ。

2つの重圧に挟まれながら、俺は冷え切った心で、通り過ぎていく夏の夜を見つめているだけだった。


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