君の手を掴むための遠回り
季節は冬へと移り変わり、街に冷たい風が吹き荒れ始めた12月初旬。
俺と瑠華の不自然すぎる距離感と、俺の心がどこにも存在しない嘘の態度は、ついに決定的な破綻の時を迎えた。
放課後、夕暮れのオレンジ色の光が残酷に差し込む誰もいない教室。
机の脇に立った彼女は、制服のスカートを強く握りしめ、肩を細かく震わせていた。
その目には溢れんばかりの涙が溜まっている。
「神楽くん……もう、終わりにしよ」
「……え?」
唐突な言葉に、俺は手にしていた鞄を置き、彼女の顔を見つめた。
いつものように
「どうしたの?」
と都合のいい優しい笑顔を作ろうとしたが、顔の筋肉が強張って引きつる。
「私、ずっと耐えてたんだよ……? 神楽くんが私と付き合ってくれたこと、すごく嬉しかった。でもね……最初からずっと、私を見てくれてなんていなかったよね」
「そんなこと────」
「嘘つかないでっ!」
教室の静寂を切り裂くような彼女の叫び声に、俺の言葉は途切れた。
彼女の目から、大きな粒の涙がボロボロと溢れ落ちる。
「秋の間、橘さんと顔を合わせないように廊下でも遠回りしてたでしょ? でもね、それって『どうでもいい相手だから』じゃないよ。『意識しすぎて直視できないから』だって、私には痛いほど分かっちゃうんだよ……!」
「……っ」
「私と一緒にいる時も、あの夏祭りに行った時だってそう! 手を繋いで歩いてても、私と身体を重ねてる時だって……! 神楽くんの目は私を見てるふりして、ずっと橘さんの影を追いかけてた! 橘さんの家の方を気にしたり、橘さんの噂話が聞こえたら急に黙り込んだり……っ」