君の手を掴むための遠回り
それからは、放課後に一緒に帰ったり、休日に出かけて映画を見たりする日々が始まった。
周りの男子からは
「マジで付き合ったのかよ!」
「羨ましいな」
と囃し立てられ、ヘラヘラと笑って誤魔化した。
誰かと一緒にいれば、確かにあの暗闇の恐怖からは逃れられた。
────だが、そんな浅はかな誤魔化しが長く続くはずもなかった。
付き合って2ヶ月が過ぎた冬の日。
公園のベンチで二人きりになった時、彼女が上目遣いで俺を見つめ、静かに目を閉じた。
『神楽くん……キス、して?』
ねだるような甘い声。
断る理由もなく、俺は流されるまま顔を近づけ、彼女の唇に自分の唇を重ねた。
柔らかくて暖かい触感。
けれど、重ねた瞬間に胸を満たしたのは、幸福感などでは断じてなかった。
脳裏を駆け巡ったのは、あの夏の日の夕道で、無邪気に笑っていた瑠華の顔。
(違う……違うんだよ……っ)
口づけを交わしている最中も、心は冷水に浸されたように氷のように冷え切っていた。
唇を離すと、彼女は嬉しそうに頬を染めて俺の首に抱きついてきたが、俺の胸の中の''寂しさ''は1ミリも埋まることなく、むしろ寒風が吹き抜けるように虚しさが広がっていくばかりだった。