恋と焦燥のロードマップ
「もちろん。明日も休みだし、どこか行こうか」
「やった。じゃあさ、ここから少し歩いたところに、面白い場所があるんだ。ちょっと付き合ってよ」
美月はそう言って、悪戯っぽく微笑んだ。
彼女の後をついて、渋谷の喧騒から少し離れた、奥渋と呼ばれるエリアの路地裏へと入っていく。隠れ家のようなカフェや古着屋が並ぶ静かな通りを抜けた先に見えてきたのは、街の小さなゲームセンターだった。
最新の大型筐体ではなく、少し色褪せた看板の、どこか懐かしい空気が漂う場所だ。
「ここ、デザインの仕事で行き詰まった時に、たまにふらっと寄るんだよね」
美月は慣れた足取りで中へ入ると、両替機で百円玉をいくつか作った。
「ほら、拓也。これ覚えてる?」
彼女が指差したのは、古い対戦型の格闘ゲームの筐体だった。高校時代、部室の鍵を閉めたあとに二人でよく寄り道して、お互いのキーホルダーを賭けて勝負した、あのゲームだった。
「嘘だろ、まだこれ現役で置いてある店あるんだな」
「でしょ? 二十九歳がスーツとニットでやるゲームじゃないかもしれないけど……勝負しよ、拓也」
美月は隣の丸椅子をぽんぽんと叩き、俺を誘う。
俺は苦笑しながら、スーツの上着のボタンを外して隣に腰掛けた。
百円玉が吸い込まれる鈍い音が響き、懐かしい電子音が鳴り響く。
レバーを握り、ボタンを叩く。お互いに社会人になって、キーボードを叩く指の動きばかりが早くなったけれど、ゲームの腕前はあの頃のまま、驚くほど下手くそだった。
「あー! 待って、今のハメ技ずるい!」
「ずるくないだろ、美月がガードしてないのが悪い」
「もう一回! 次は絶対勝つから!」
画面の中でキャラクターが倒れるたびに、美月は高校生の時みたいに悔しがり、俺の腕をぽかぽかと叩いた。ヒールを履いていることも、大人っぽいハーフアップの髪型も忘れたように、子供みたいに笑う美月。
その弾けた笑顔が視界に飛び込んでくるたびに、俺の胸は、ドクンと大きな音を立てて跳ね上がった。
(……やっぱり、可愛いな)
「やった。じゃあさ、ここから少し歩いたところに、面白い場所があるんだ。ちょっと付き合ってよ」
美月はそう言って、悪戯っぽく微笑んだ。
彼女の後をついて、渋谷の喧騒から少し離れた、奥渋と呼ばれるエリアの路地裏へと入っていく。隠れ家のようなカフェや古着屋が並ぶ静かな通りを抜けた先に見えてきたのは、街の小さなゲームセンターだった。
最新の大型筐体ではなく、少し色褪せた看板の、どこか懐かしい空気が漂う場所だ。
「ここ、デザインの仕事で行き詰まった時に、たまにふらっと寄るんだよね」
美月は慣れた足取りで中へ入ると、両替機で百円玉をいくつか作った。
「ほら、拓也。これ覚えてる?」
彼女が指差したのは、古い対戦型の格闘ゲームの筐体だった。高校時代、部室の鍵を閉めたあとに二人でよく寄り道して、お互いのキーホルダーを賭けて勝負した、あのゲームだった。
「嘘だろ、まだこれ現役で置いてある店あるんだな」
「でしょ? 二十九歳がスーツとニットでやるゲームじゃないかもしれないけど……勝負しよ、拓也」
美月は隣の丸椅子をぽんぽんと叩き、俺を誘う。
俺は苦笑しながら、スーツの上着のボタンを外して隣に腰掛けた。
百円玉が吸い込まれる鈍い音が響き、懐かしい電子音が鳴り響く。
レバーを握り、ボタンを叩く。お互いに社会人になって、キーボードを叩く指の動きばかりが早くなったけれど、ゲームの腕前はあの頃のまま、驚くほど下手くそだった。
「あー! 待って、今のハメ技ずるい!」
「ずるくないだろ、美月がガードしてないのが悪い」
「もう一回! 次は絶対勝つから!」
画面の中でキャラクターが倒れるたびに、美月は高校生の時みたいに悔しがり、俺の腕をぽかぽかと叩いた。ヒールを履いていることも、大人っぽいハーフアップの髪型も忘れたように、子供みたいに笑う美月。
その弾けた笑顔が視界に飛び込んでくるたびに、俺の胸は、ドクンと大きな音を立てて跳ね上がった。
(……やっぱり、可愛いな)