恋と焦燥のロードマップ
急カーブの激しい遠心力で体が左右に大きく揺さぶられるたび、美月の肩や腕が、俺の体に何度もぶつかった。
「うわ、すごいこれ!」
声を上げながら、隣で髪を激しくなびかせ、子どもみたいに笑っている美月を見る。その弾けた笑顔があまりにも自然で、俺もただ風を切りながら、声を合わせて笑っていた。
アプリで他の人と会っていたときの、あの自分を良く見せようとする肩肘張った感覚は、ここにはどこにもない。
アトラクションを降り、少し足元をふらつかせながら美月が振り返る。
「楽しかったー!」
「本当に、すごい迫力だったな」
俺は乱れた前髪を手で払いながら、笑って答えた。
十年の時間を飛び越えて、俺たちはこうして並んで、何でもないことで笑い合えている。これ以上ないほど満ち足りた、穏やかな安心感。俺はその心地よさに身を委ねたまま、日が暮れるまで園内を歩き続けた。
すっかり夜の帳が降りた街へ戻り、俺たちはあの路地裏へと足を踏み入れた。
赤提灯の灯がアスファルトを濡らす、10年ぶりに再会したあの居酒屋。
「いらっしゃい」という店員の威勢のいい声に迎えられ、通されたのは、もうすっかり指定席のようになった一番奥の小さな座敷の席だった。
木目のハゲかけたテーブルの上に、注文したばかりの生ビールが二つ運ばれてくる。お互いにジョッキを持ち上げ、視線を合わせた。カラン、と小気味いい音を立てて硝子を合わせる。
「お疲れ様。今日も楽しかったな」
「うん、お疲れ様! 本当に楽しかった」
冷えたビールを喉に流し込み、美月は小さくぷはぁと息を吐いて笑った。
水族館、遊園地。デートを重ねるたびに、二人の距離は近づき、会話のテンポはどこまでも滑らかになっていく。周囲の結婚ラッシュに対する焦りも、マッチングアプリの減点法で値踏みし合う息苦しさも、美月といる時間の中にはどこにもなかった。
ここにあるのは、これ以上ないほど完成された『正解』のルートだ。
このまま、ちゃんともう一度美月と付き合う。十年前に駅のホームで千切れてしまった糸を、今度こそ強く結び直す。その未来に向かって、俺たちの関係は一点の曇りもなく、綺麗に舗装された道路を走っているはずだった。
けれど、スマートフォンの画面に表示される、美月からの『次はどこに行こうか!』という楽しげなメッセージを見つめるとき。
「うわ、すごいこれ!」
声を上げながら、隣で髪を激しくなびかせ、子どもみたいに笑っている美月を見る。その弾けた笑顔があまりにも自然で、俺もただ風を切りながら、声を合わせて笑っていた。
アプリで他の人と会っていたときの、あの自分を良く見せようとする肩肘張った感覚は、ここにはどこにもない。
アトラクションを降り、少し足元をふらつかせながら美月が振り返る。
「楽しかったー!」
「本当に、すごい迫力だったな」
俺は乱れた前髪を手で払いながら、笑って答えた。
十年の時間を飛び越えて、俺たちはこうして並んで、何でもないことで笑い合えている。これ以上ないほど満ち足りた、穏やかな安心感。俺はその心地よさに身を委ねたまま、日が暮れるまで園内を歩き続けた。
すっかり夜の帳が降りた街へ戻り、俺たちはあの路地裏へと足を踏み入れた。
赤提灯の灯がアスファルトを濡らす、10年ぶりに再会したあの居酒屋。
「いらっしゃい」という店員の威勢のいい声に迎えられ、通されたのは、もうすっかり指定席のようになった一番奥の小さな座敷の席だった。
木目のハゲかけたテーブルの上に、注文したばかりの生ビールが二つ運ばれてくる。お互いにジョッキを持ち上げ、視線を合わせた。カラン、と小気味いい音を立てて硝子を合わせる。
「お疲れ様。今日も楽しかったな」
「うん、お疲れ様! 本当に楽しかった」
冷えたビールを喉に流し込み、美月は小さくぷはぁと息を吐いて笑った。
水族館、遊園地。デートを重ねるたびに、二人の距離は近づき、会話のテンポはどこまでも滑らかになっていく。周囲の結婚ラッシュに対する焦りも、マッチングアプリの減点法で値踏みし合う息苦しさも、美月といる時間の中にはどこにもなかった。
ここにあるのは、これ以上ないほど完成された『正解』のルートだ。
このまま、ちゃんともう一度美月と付き合う。十年前に駅のホームで千切れてしまった糸を、今度こそ強く結び直す。その未来に向かって、俺たちの関係は一点の曇りもなく、綺麗に舗装された道路を走っているはずだった。
けれど、スマートフォンの画面に表示される、美月からの『次はどこに行こうか!』という楽しげなメッセージを見つめるとき。