放課後ロック・クラッカー!〜校内の開かずの扉、すべて開けてみせます〜
カチ……コチ……カチ……コチ……。
部屋全体を揺らす不気味な歯車の回転音とともに、壁の液晶盤に刻まれた赤色LEDの数字が刻一刻と減っていく。
『【09:59】……【09:58】……【09:57】……』
ゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!
頭上を見上げれば、無数の鋭利な鋼鉄の刺(スパイク)がびっしりと生えた巨大な圧殺天井が、ズシン、ズシンと不気味な重音を立てて下降を始めていた。このままでは十分後、私たちはペシャンコに押し潰された肉塊になってしまう。
(冷や汗を拭っている暇すらない……! 全集中……!!)
私は呼吸を整え、ツールポーチから最高硬度のチタン製ピックとテンションレンチを同時に四本抜き取った。
目の前に聳え立つ等身大のアイアン・メイデン彫刻。その全身に散らばる十の鍵穴(キーホール)は、まるで蜂の巣のように不規則に配置されていた。
(どこから手を付けるべき……? 十の鍵穴が全部内部の伝達ギアで繋がっている……! 順番を一つでも間違えれば、その瞬間に連動トラップが発動して即死!?)
(迷うな、鈴宮! お前の指先を信じろ!!)
ドカァンッ!!
凄まじい衝撃音が拷問部屋に響き渡った。
壁の闇から解き放たれた真鍮製の巨大な鎖と刃付きの万力が、弾丸のような速度で私めがけて飛来してきたのだ。それを神臣先輩が素早く前に踏み込み、黒い革手袋をはめた両手で鎖を力任せに掴み取り、豪快に壁へと叩きつけた!
「神臣先輩……っ!?」
「前だけを見ろと言ったはずだ! 背後は僕が死んでも死守する!! お前は目の前の鍵だけに集中しろ!!」
神臣先輩の制服の袖が破れ、鋭い鎖のフックがかすめて赤い血が滲む。だが、その漆黒の瞳には一切の怯みもなく、圧倒的な威厳と私を守るという執念だけが燃え上がっていた。
(神臣先輩が命がけで時間を稼いでくれている……! 私が弱気になってどうするの……!!)
私は唇を強く噛み締め、右耳の集音センサーの感度を極限まで引き上げた。
(キーホールの内部構造……聴くのよ、ギアの『声』を……!)
一番目の鍵穴──右肩の『第一シリンダー』へピックを挿入する。
(──カチ。……違う、これは誘い(ダミー)のピン! 本命は左腰の『第七シリンダー』!!)
ススッ! と指先を滑らせ、第七シリンダーへとピックを突っ込む。微細な磁気反発を感じ取ると同時に、テンションをミリ単位でねじ込む。
シュピンッ──カチリ!!
『【08:42】──第一回路、解錠!』
液晶盤の数字が点滅し、青い光が灯る!
「よしっ、いける!! 回路の繋がりの規則性(ロジック)が見えた!!」
「よくやった鈴宮! そのまま突っ走れ!!」
ガギギギギギッ!!
神臣先輩が襲い来るギロチンの大刃を警棒で受け止め、火花を激しく散らしながら叩き落とす。頭上からは圧殺天井がすでに私の頭頂部から二メートルほどの位置まで迫ってきていた。埃と鉄の粉塵が舞い散り、呼吸すら息苦しい。
(第二回路……右足の鍵穴! 第三回路……胸中央の鍵穴!!)
ジャキンッ! カチリ!
ジャキンッ! カチリ!
私の両手は残像を描くほどのスピードで動いていた。無数のピンの反発を指先の触覚だけで見極め、次々とシリンダーを固定していく。
『【06:15】──第四回路まで突破!!』
(はあ……はあ……っ! 順調……このペースなら、圧殺される前に解ける……!)
私がそう確信し、第五の鍵穴──アイアン・メイデンの『心臓部』に位置する深紅のシリンダーへピックを差し込んだ、その瞬間だった。
(……ッ!? しまっ──)
バチバチバチバチッ!!!
「きゃああああああっ!!?」
指先に走ったのは、これまでに体験したこともないような強烈な『高電圧ショック』だった!
ドサッ!!
私は激しい激痛と痺れでピックを弾き飛ばされ、地面の石畳へと倒れ込んだ。両手が激しく痙攣し、感覚が麻痺していく。
「鈴宮っ!?」
「神臣……先輩……うぅ……手が……指が……動かない……っ!」
見上げれば、第五の鍵穴から不気味な黒い煙が立ち上っていた。
『クックック……引っかかったな、愚かなクラッカーめ』
壁のスピーカーから、機械音声が嘲笑するように響く。
『第五回路は「トラップ・シリンダー」。正しいピックの角度以外で接触すれば、五万ボルトの電流が指先を焼き尽くす。一度でもミスをすれば……ペナルティとしてカウントダウンは十倍の速度で加速する!!』
ピッピッピッピッピッ……!!
赤色LEDの数字が狂ったようなハイスピードで減少を始めた。
『【04:30】……【03:10】……【02:00】……【01:30】……!!』
残り時間、実質一分未満!!
圧殺天井の鋭いスパークが、すでに神臣先輩の背中に触れそうなほど間近に迫っていた!
(そんな……手が……痺れて……ピックが持てない……。私のせいで……神臣先輩まで……っ!)
絶望と恐怖で、私の瞳からぽろぽろと大粒の涙が溢れ出した。
手が震えて動かない。チタン製のピックが、石畳の上で虚しく転がっている。
(終わり……なの……? ここで、神臣先輩と一緒に潰されちゃうの……!?)
その時だった。
バッと力強い腕が、倒れ込む私の身体を床から抱き上げた。
「神臣……先輩……?」
神臣先輩は、激しい電流の余波が残る私の両手を、迷わず自分の大きな両手で包み込んだ。
バチッと小さな静電気が先輩の手にも弾ける。けれど、先輩は痛みに顔一つ歪めず、むしろ私を慈しむように、その痺れた指先をぎゅっと強く握り締めてくれた。
「神臣先輩……触ったらダメです! 電流が……!」
「黙って聞いていろ、鈴宮」
目の前に迫る神臣先輩の顔。
息が触れ合うほどの至近距離。先輩の漆黒の瞳には、一切の迷いも、諦めも存在していなかった。
「お前の指先が動かないなら……僕の手を使え」
「え……?」
「僕の手をお前の指となせ。僕の身体をお前の道具と心得よ。……お前が指示を出せ。僕はその通りに動く。僕たち二人で解けない鍵など、この世に存在すると思うか?」
その言葉と、包み込まれた手から伝わってくる圧倒的な熱量。
熱い……心が、指先が、先輩の温もりで一気に蘇っていく。
(そうだ……! 私は一人じゃない……! 神臣先輩が……私のバディが、ここにいてくれる!!)
「神臣先輩……っ! はい……はいっ!!」
私は溢れ出る涙を腕で拭うと、神臣先輩の手に自分の手を重ね合わせ、ピックを握り直した。
「残り時間、あと四十五秒……!! 神臣先輩、私の指の動きに合わせて、テンションを左へ三十度!! 発進です!!」
「任せろ!!」
二人で一つのピックを握り、第五の鍵穴へと再び挑む!
私のアドバイスに従い、神臣先輩が絶妙な力加減でテンションをかける。
私と神臣先輩の呼吸が、心が、完璧に一つに重なり合っていく。
──カチリ!!
『【00:30】──第五回路、突破!!』
「そのまま第六、第七、第八……一気に行きます!!」
ジャキン! カチリ!
ジャキン! カチリ!
ジャキン! カチリ!
奇跡のような連動。神臣先輩の力強さと、私の繊細な感覚が合体し、不可能と思われた死のシリンダーが次々と落ちていく!
圧殺天井の棘が、神臣先輩の肩をかすめ、制服を切り裂く。
だが、私たちはもう一歩も引かない!
『【00:10】……【00:09】……【00:08】……!!』
「第九回路、突破!! 次で最後です、神臣先輩!!」
「おおおっ! 決めろ、鈴宮!!」
残り時間あと五秒!
ついに辿り着いた最後の『第十の鍵穴』──アイアン・メイデンの額に刻まれた黄金のシリンダー!
私が二人の手を重ねてピックを突き立てようとした──まさにその瞬間!
カチッ……。
第十の鍵穴の内部から、突如として凶悪な『生体認証針』が跳ね上がってきた!
『警告。第十回路は「生体犠牲錠(ブラッド・ロック)」。この鍵穴を開くには──挑戦者の「生の血液」を鍵穴へ捧げねばならない。血を捧げぬ者は、即座に圧殺する』
(なっ……!? 生の……血液……!?)
残り時間、あと三秒!!
圧殺天井が、ズドンッ!! と私たちの頭上数十センチまで落とし込まれてきた!
針の生えた鍵穴を前に、私は息を飲んだ。
(血を捧げるなんて……そんなの……神臣先輩の手を傷つけさせるわけには──)
「迷うな、鈴宮!!!」
神臣先輩が叫ぶや否や、私を庇うように自分の右手のひらを、そのまま無数の毒針が生えた第十の鍵穴へと叩きつけた──!!
「神臣先輩っっ!!?」
部屋全体を揺らす不気味な歯車の回転音とともに、壁の液晶盤に刻まれた赤色LEDの数字が刻一刻と減っていく。
『【09:59】……【09:58】……【09:57】……』
ゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!
頭上を見上げれば、無数の鋭利な鋼鉄の刺(スパイク)がびっしりと生えた巨大な圧殺天井が、ズシン、ズシンと不気味な重音を立てて下降を始めていた。このままでは十分後、私たちはペシャンコに押し潰された肉塊になってしまう。
(冷や汗を拭っている暇すらない……! 全集中……!!)
私は呼吸を整え、ツールポーチから最高硬度のチタン製ピックとテンションレンチを同時に四本抜き取った。
目の前に聳え立つ等身大のアイアン・メイデン彫刻。その全身に散らばる十の鍵穴(キーホール)は、まるで蜂の巣のように不規則に配置されていた。
(どこから手を付けるべき……? 十の鍵穴が全部内部の伝達ギアで繋がっている……! 順番を一つでも間違えれば、その瞬間に連動トラップが発動して即死!?)
(迷うな、鈴宮! お前の指先を信じろ!!)
ドカァンッ!!
凄まじい衝撃音が拷問部屋に響き渡った。
壁の闇から解き放たれた真鍮製の巨大な鎖と刃付きの万力が、弾丸のような速度で私めがけて飛来してきたのだ。それを神臣先輩が素早く前に踏み込み、黒い革手袋をはめた両手で鎖を力任せに掴み取り、豪快に壁へと叩きつけた!
「神臣先輩……っ!?」
「前だけを見ろと言ったはずだ! 背後は僕が死んでも死守する!! お前は目の前の鍵だけに集中しろ!!」
神臣先輩の制服の袖が破れ、鋭い鎖のフックがかすめて赤い血が滲む。だが、その漆黒の瞳には一切の怯みもなく、圧倒的な威厳と私を守るという執念だけが燃え上がっていた。
(神臣先輩が命がけで時間を稼いでくれている……! 私が弱気になってどうするの……!!)
私は唇を強く噛み締め、右耳の集音センサーの感度を極限まで引き上げた。
(キーホールの内部構造……聴くのよ、ギアの『声』を……!)
一番目の鍵穴──右肩の『第一シリンダー』へピックを挿入する。
(──カチ。……違う、これは誘い(ダミー)のピン! 本命は左腰の『第七シリンダー』!!)
ススッ! と指先を滑らせ、第七シリンダーへとピックを突っ込む。微細な磁気反発を感じ取ると同時に、テンションをミリ単位でねじ込む。
シュピンッ──カチリ!!
『【08:42】──第一回路、解錠!』
液晶盤の数字が点滅し、青い光が灯る!
「よしっ、いける!! 回路の繋がりの規則性(ロジック)が見えた!!」
「よくやった鈴宮! そのまま突っ走れ!!」
ガギギギギギッ!!
神臣先輩が襲い来るギロチンの大刃を警棒で受け止め、火花を激しく散らしながら叩き落とす。頭上からは圧殺天井がすでに私の頭頂部から二メートルほどの位置まで迫ってきていた。埃と鉄の粉塵が舞い散り、呼吸すら息苦しい。
(第二回路……右足の鍵穴! 第三回路……胸中央の鍵穴!!)
ジャキンッ! カチリ!
ジャキンッ! カチリ!
私の両手は残像を描くほどのスピードで動いていた。無数のピンの反発を指先の触覚だけで見極め、次々とシリンダーを固定していく。
『【06:15】──第四回路まで突破!!』
(はあ……はあ……っ! 順調……このペースなら、圧殺される前に解ける……!)
私がそう確信し、第五の鍵穴──アイアン・メイデンの『心臓部』に位置する深紅のシリンダーへピックを差し込んだ、その瞬間だった。
(……ッ!? しまっ──)
バチバチバチバチッ!!!
「きゃああああああっ!!?」
指先に走ったのは、これまでに体験したこともないような強烈な『高電圧ショック』だった!
ドサッ!!
私は激しい激痛と痺れでピックを弾き飛ばされ、地面の石畳へと倒れ込んだ。両手が激しく痙攣し、感覚が麻痺していく。
「鈴宮っ!?」
「神臣……先輩……うぅ……手が……指が……動かない……っ!」
見上げれば、第五の鍵穴から不気味な黒い煙が立ち上っていた。
『クックック……引っかかったな、愚かなクラッカーめ』
壁のスピーカーから、機械音声が嘲笑するように響く。
『第五回路は「トラップ・シリンダー」。正しいピックの角度以外で接触すれば、五万ボルトの電流が指先を焼き尽くす。一度でもミスをすれば……ペナルティとしてカウントダウンは十倍の速度で加速する!!』
ピッピッピッピッピッ……!!
赤色LEDの数字が狂ったようなハイスピードで減少を始めた。
『【04:30】……【03:10】……【02:00】……【01:30】……!!』
残り時間、実質一分未満!!
圧殺天井の鋭いスパークが、すでに神臣先輩の背中に触れそうなほど間近に迫っていた!
(そんな……手が……痺れて……ピックが持てない……。私のせいで……神臣先輩まで……っ!)
絶望と恐怖で、私の瞳からぽろぽろと大粒の涙が溢れ出した。
手が震えて動かない。チタン製のピックが、石畳の上で虚しく転がっている。
(終わり……なの……? ここで、神臣先輩と一緒に潰されちゃうの……!?)
その時だった。
バッと力強い腕が、倒れ込む私の身体を床から抱き上げた。
「神臣……先輩……?」
神臣先輩は、激しい電流の余波が残る私の両手を、迷わず自分の大きな両手で包み込んだ。
バチッと小さな静電気が先輩の手にも弾ける。けれど、先輩は痛みに顔一つ歪めず、むしろ私を慈しむように、その痺れた指先をぎゅっと強く握り締めてくれた。
「神臣先輩……触ったらダメです! 電流が……!」
「黙って聞いていろ、鈴宮」
目の前に迫る神臣先輩の顔。
息が触れ合うほどの至近距離。先輩の漆黒の瞳には、一切の迷いも、諦めも存在していなかった。
「お前の指先が動かないなら……僕の手を使え」
「え……?」
「僕の手をお前の指となせ。僕の身体をお前の道具と心得よ。……お前が指示を出せ。僕はその通りに動く。僕たち二人で解けない鍵など、この世に存在すると思うか?」
その言葉と、包み込まれた手から伝わってくる圧倒的な熱量。
熱い……心が、指先が、先輩の温もりで一気に蘇っていく。
(そうだ……! 私は一人じゃない……! 神臣先輩が……私のバディが、ここにいてくれる!!)
「神臣先輩……っ! はい……はいっ!!」
私は溢れ出る涙を腕で拭うと、神臣先輩の手に自分の手を重ね合わせ、ピックを握り直した。
「残り時間、あと四十五秒……!! 神臣先輩、私の指の動きに合わせて、テンションを左へ三十度!! 発進です!!」
「任せろ!!」
二人で一つのピックを握り、第五の鍵穴へと再び挑む!
私のアドバイスに従い、神臣先輩が絶妙な力加減でテンションをかける。
私と神臣先輩の呼吸が、心が、完璧に一つに重なり合っていく。
──カチリ!!
『【00:30】──第五回路、突破!!』
「そのまま第六、第七、第八……一気に行きます!!」
ジャキン! カチリ!
ジャキン! カチリ!
ジャキン! カチリ!
奇跡のような連動。神臣先輩の力強さと、私の繊細な感覚が合体し、不可能と思われた死のシリンダーが次々と落ちていく!
圧殺天井の棘が、神臣先輩の肩をかすめ、制服を切り裂く。
だが、私たちはもう一歩も引かない!
『【00:10】……【00:09】……【00:08】……!!』
「第九回路、突破!! 次で最後です、神臣先輩!!」
「おおおっ! 決めろ、鈴宮!!」
残り時間あと五秒!
ついに辿り着いた最後の『第十の鍵穴』──アイアン・メイデンの額に刻まれた黄金のシリンダー!
私が二人の手を重ねてピックを突き立てようとした──まさにその瞬間!
カチッ……。
第十の鍵穴の内部から、突如として凶悪な『生体認証針』が跳ね上がってきた!
『警告。第十回路は「生体犠牲錠(ブラッド・ロック)」。この鍵穴を開くには──挑戦者の「生の血液」を鍵穴へ捧げねばならない。血を捧げぬ者は、即座に圧殺する』
(なっ……!? 生の……血液……!?)
残り時間、あと三秒!!
圧殺天井が、ズドンッ!! と私たちの頭上数十センチまで落とし込まれてきた!
針の生えた鍵穴を前に、私は息を飲んだ。
(血を捧げるなんて……そんなの……神臣先輩の手を傷つけさせるわけには──)
「迷うな、鈴宮!!!」
神臣先輩が叫ぶや否や、私を庇うように自分の右手のひらを、そのまま無数の毒針が生えた第十の鍵穴へと叩きつけた──!!
「神臣先輩っっ!!?」