放課後ロック・クラッカー!〜校内の開かずの扉、すべて開けてみせます〜
第二章 地下迷宮の罠と、第一の開かずの扉
「う、うわあぁぁぁ……っ! なにこれ、凄すぎる……っ! このしなり、この刃先の角度、完璧すぎるよカイ先輩……!」
放課後。生徒会室の隠し部屋『S.O.S本部』に、私の歓喜の叫びが響き渡った。
目の前の作業台にズラリと並べられているのは、カイ先輩が徹夜で作ってくれたという私専用の『特注ピッキングツールセット』だ。
超軽量のチタン合金で作られたピックは、私の細い指にしっくりと馴染み、まるで自分の身体の一部みたいに軽い。さらに、マイクロ集音センサー付きの聴診器は、ダイヤル内の摩擦音を何十倍にも増幅してイヤホンに届けてくれるスゴイ優れものだ。
「フフン、満足してくれた? 鈴宮ちゃんの指のサイズと握力を計算して、0.1ミリ単位で削り出したんだから!」
「素晴らしいです! 一生ついていきますカイ先輩! このテンションアームの適度な反発力なんて、もはや芸術作品ですよ……!」
私がうっとりとスチール製のツールを頬擦りしていると、背後からあきれ返ったような溜め息が降ってきた。
「……相変わらず、鍵のことになると一瞬でポンコツになるな、お前は」
振り返ると、神臣先輩が腕を組んで壁に寄りかかっていた。
今日も乱れひとつない完璧な制服姿。相変わらず目の毒になるレベルの美顔だけれど、その手には旧資料室の金庫から出てきた『目玉の鍵』と、古い羊皮紙の地図が握られている。
「作戦会議だ、集まれ」
神臣先輩がデスクの上に古い地図を広げた。
それは学園の敷地全体を描いた手書きの羊皮紙で、現代の校舎図面には存在しない「秘密の地下通路」が朱色のインクで張り巡らされていた。
「この地図によれば、学園の地下には百年前の創立期に造られた地下水路と迷宮(ラビリンス)が広がっている。そして、僕たちが向かう『第一の開かずの扉』が存在するのは――中央時計塔の真下に位置する最深部だ」
「中央時計塔の地下……? あそこって、立ち入り禁止区域ですよね?」
「ああ。表向きは『老朽化による崩落の危険があるため』とされているが、本当の理由は別だ。過去に何度か捜索隊が入ろうとしたが、途中のトラップと頑丈な仕掛け扉に阻まれ、誰ひとりとして最深部には辿り着けなかったらしい」
神臣先輩の漆黒の瞳が、静かに私を射抜く。
「だが、今の僕たちには『目玉の鍵』と、どんなロックも破る『鍵開け姫』がいる」
「だ、だからその変な二つ名で呼ぶのはやめてくださいってば!」
真っ赤になって抗議する私を、カイ先輩が「まあまあ!」となだめてくれた。
「ボクは地上からふたりの通信機器をサポートしつつ、地下の防犯システムをハッキングで麻痺させるよ。現地で鍵を破るのは鈴宮ちゃんと、警護役の神臣先輩のふたりだ。気をつけてね!」
「了解だ。……鈴宮、準備はいいか?」
「もちろんです! 私の新しい相棒たちのデビュー戦、どんと来いです!」
私は胸を張り、チタン製のツールポーチを腰のベルトにしっかりと装着した。
*
中央時計塔の1階、普段は固く施錠されている搬入口の奥。
掃除用具入れの裏側に隠されていた隠し扉を開けると、そこには下へと続く長い石造りの螺旋階段が伸びていた。
ひんやりとした湿った空気が、足元から吹き上がってくる。
カツン、カツンと、神臣先輩と私の足音が不気味に地下空間へ響き渡る。
「うう……なんだか急に薄気味悪くなってきましたね……」
「なんだ、急に弱気か? あんなに張り切っていた癖に」
「だって、暗いしカビくさいし、何かお化けとか出そうじゃないですか!」
懐中電灯の光だけが頼りの暗闇に、私は思わず神臣先輩のブレザーの袖をキュッと掴んでしまった。
すると、神臣先輩は少しだけ歩幅を狭め、私の歩調に合わせてくれた。
「安心しろ。お化けなど出ない。……万が一出たとしても、僕が蹴り飛ばしてやる」
「お化けって物理で蹴れるんですか!?」
「僕の蹴りなら効く」
真顔で凄まじいことを言う先輩に、思わず緊張がほぐれてクスッと笑ってしまう。
冷たい『氷の王子様』だと思っていたけれど、こうやって隣を歩いてくれていると、なんだかすごく頼もしい。
階段を降りきると、そこはレンガ造りの巨大な地下水路になっていた。
足元には冷たい水がチョロチョロと流れており、壁には古びた鉄製のパイプや歯車が剥き出しになっている。
『こちらS.O.S本部! ふたりとも聞こえる? 今、ちょうど時計塔の真下あたりに到達したよ!』
インカムからカイ先輩の明るい声が届く。
「ああ、聞こえている。今のところ目立った障害はないが――」
神臣先輩が言葉を途切れさせた。
懐中電灯の光が照らし出したのは、水路を完全に塞ぐように聳え立つ、頑丈な『鉄格子の水門』だった。
鉄格子の中央には、真鍮製の大きな丸い盤面が取り付けられている。
「出た……! 最初の障害ですね!」
私が駆け寄って盤面を観察すると、そこには一から九までの数字が刻まれたダイヤルと、三本の針がついていた。
「これ……普通のダイヤル錠じゃない。圧力計と連動した『水圧式バランス・ロック』だわ!」
「水圧式……? どういう構造だ?」
「水門の向こう側に溜まっている水圧を利用して、特定の重さと圧力のバランスが一致した時だけシリンダーが回る仕組みです。……あっ! 見てください、上!」
私が指差した先――天井の隙間から、ポタポタと水滴が垂れる速度が急激に速くなっていた。
ギギギギ……と、不気味な重低音が水路全体に響き渡る。
『やばい! ふたりとも気をつけて!』
インカム越しにカイ先輩の焦った声が跳ね上がった。
『その水門、侵入者を検知すると上流のアクア・トラップが作動する仕組みになってる! あと三分で水門の手前側の区画が水没しちゃうよ!』
「なに……!? 三分で水没だと!?」
神臣先輩が目を見開き、即座に私を背後に庇おうとした。
「鈴宮、一度階段まで退避するぞ! 水没したらひとたまりもない!」
「ダメです! 一度退避したら、このトラップは完全に水圧で固着して二度と開かなくなります!」
私は神臣先輩の手を振り払い、水門の盤面へ飛びついた。
「三分あれば十分です! カイ先輩、聴診センサーの感度を最高に上げて!」
『う、うん! 了解!』
両耳にイヤホンを押し込み、特注のチタン製ピックをダイヤルの隙間に滑り込ませる。
迫り来る水の音。足元を侵食していく冷たい水流。
だけど、私の意識は一瞬で無音の世界へと没入した。
『水圧で押しつけられている座金の抵抗……重い! だけど、内部の圧力弁が開放される「遊び」のポジションが必ずあるはず……!』
指先を通じて、細いチタンピックが内部の微小な歯車に触れる。
カチ……ギギ……。
「そこ……っ!」
私はダイヤルを右へ二回転半、そして左へ微調整しながら、テンションアームで内部の弁を押し上げた。
――バシュッ!!
高圧の空気が抜ける爽快な音が響き、三本の針がピタリと中央の刻印で重なった。
重厚な鉄格子が、ゴゴゴ……と音を立てて天井へと引き上げられていく。水門の向こう側へと溜まっていた水が流れ出し、足元の水位がスッと下がった。
「ふぅ……! 解除完了です!」
汗を拭って振り返ると、神臣先輩が呆然とした顔で私を見つめていた。
「……たった一分半か。相変わらず、お前の指先は恐ろしいな」
「へへっ、カイ先輩の特注ツールのおかげですよ!」
ドヤ顔で八重歯を見せる私に、神臣先輩はふっと口元を緩めると、私の頭の上にぽんと手を置いた。
「よくやった、鈴宮。……助かった」
「え……あ……」
頭の上に伝わる、大きな手の温もり。
普段は意地悪でドSな先輩が、すごく優しく私を褒めてくれている。
『う、うわわわわっ……!? な、なにこれ! 急に優しくされると、心臓が爆発しそうになるんだけど……!?』
一瞬で顔が茹でダコのように熱くなり、私は慌てて神臣先輩の手を振り払った。
「あ、条件三号を忘れないでくださいね! 対等なバディなんですから、子供扱い禁止です!」
「フッ……照れているのか? 可愛いところもあるんだな」
「照れてません! ほら、先を急ぎますよっ!」
大慌てで水門の奥へ駆け出す私を、神臣先輩が楽しそうに追いかけてくる。
水門を抜けて、暗く長い地下道をさらに奥へと進むこと数分。
やがて、広いドーム状の空間へと出た。
その中央に――『それ』は待っていた。
周囲のレンガ造りの壁とは明らかに異質な、漆黒の金属で覆われた巨大な両開きの扉。
表面には無数のギアとチェーンが複雑に組み込まれ、中央には気味の悪い「目玉」のレリーフ。そして何より異様なのは――扉の横に、現代の液晶画面のような青い光を放つ『鉱石端末』が埋め込まれていることだった。
「これが……『第一の開かずの扉』……」
神臣先輩が息をのむ。
百年前のカラクリ技術と、現代のテクノロジーが融合した、不気味で美しい謎の扉。
私は引き寄せられるように扉の前へ歩み寄り、漆黒の金属表面にそっと触れた。
――ズキン。
その瞬間、指先から電撃のような微小な振動が走り抜けた。
『な……なにこれ……!? 普通の鍵じゃない……! 物理的なロックと、暗号解読のプロテクトが完全に融合してる……!?』
私の「鍵オタク」としての本能が、今までにない最大の危険とワクワクを察知して、激しく警鐘を鳴らしていた。
放課後。生徒会室の隠し部屋『S.O.S本部』に、私の歓喜の叫びが響き渡った。
目の前の作業台にズラリと並べられているのは、カイ先輩が徹夜で作ってくれたという私専用の『特注ピッキングツールセット』だ。
超軽量のチタン合金で作られたピックは、私の細い指にしっくりと馴染み、まるで自分の身体の一部みたいに軽い。さらに、マイクロ集音センサー付きの聴診器は、ダイヤル内の摩擦音を何十倍にも増幅してイヤホンに届けてくれるスゴイ優れものだ。
「フフン、満足してくれた? 鈴宮ちゃんの指のサイズと握力を計算して、0.1ミリ単位で削り出したんだから!」
「素晴らしいです! 一生ついていきますカイ先輩! このテンションアームの適度な反発力なんて、もはや芸術作品ですよ……!」
私がうっとりとスチール製のツールを頬擦りしていると、背後からあきれ返ったような溜め息が降ってきた。
「……相変わらず、鍵のことになると一瞬でポンコツになるな、お前は」
振り返ると、神臣先輩が腕を組んで壁に寄りかかっていた。
今日も乱れひとつない完璧な制服姿。相変わらず目の毒になるレベルの美顔だけれど、その手には旧資料室の金庫から出てきた『目玉の鍵』と、古い羊皮紙の地図が握られている。
「作戦会議だ、集まれ」
神臣先輩がデスクの上に古い地図を広げた。
それは学園の敷地全体を描いた手書きの羊皮紙で、現代の校舎図面には存在しない「秘密の地下通路」が朱色のインクで張り巡らされていた。
「この地図によれば、学園の地下には百年前の創立期に造られた地下水路と迷宮(ラビリンス)が広がっている。そして、僕たちが向かう『第一の開かずの扉』が存在するのは――中央時計塔の真下に位置する最深部だ」
「中央時計塔の地下……? あそこって、立ち入り禁止区域ですよね?」
「ああ。表向きは『老朽化による崩落の危険があるため』とされているが、本当の理由は別だ。過去に何度か捜索隊が入ろうとしたが、途中のトラップと頑丈な仕掛け扉に阻まれ、誰ひとりとして最深部には辿り着けなかったらしい」
神臣先輩の漆黒の瞳が、静かに私を射抜く。
「だが、今の僕たちには『目玉の鍵』と、どんなロックも破る『鍵開け姫』がいる」
「だ、だからその変な二つ名で呼ぶのはやめてくださいってば!」
真っ赤になって抗議する私を、カイ先輩が「まあまあ!」となだめてくれた。
「ボクは地上からふたりの通信機器をサポートしつつ、地下の防犯システムをハッキングで麻痺させるよ。現地で鍵を破るのは鈴宮ちゃんと、警護役の神臣先輩のふたりだ。気をつけてね!」
「了解だ。……鈴宮、準備はいいか?」
「もちろんです! 私の新しい相棒たちのデビュー戦、どんと来いです!」
私は胸を張り、チタン製のツールポーチを腰のベルトにしっかりと装着した。
*
中央時計塔の1階、普段は固く施錠されている搬入口の奥。
掃除用具入れの裏側に隠されていた隠し扉を開けると、そこには下へと続く長い石造りの螺旋階段が伸びていた。
ひんやりとした湿った空気が、足元から吹き上がってくる。
カツン、カツンと、神臣先輩と私の足音が不気味に地下空間へ響き渡る。
「うう……なんだか急に薄気味悪くなってきましたね……」
「なんだ、急に弱気か? あんなに張り切っていた癖に」
「だって、暗いしカビくさいし、何かお化けとか出そうじゃないですか!」
懐中電灯の光だけが頼りの暗闇に、私は思わず神臣先輩のブレザーの袖をキュッと掴んでしまった。
すると、神臣先輩は少しだけ歩幅を狭め、私の歩調に合わせてくれた。
「安心しろ。お化けなど出ない。……万が一出たとしても、僕が蹴り飛ばしてやる」
「お化けって物理で蹴れるんですか!?」
「僕の蹴りなら効く」
真顔で凄まじいことを言う先輩に、思わず緊張がほぐれてクスッと笑ってしまう。
冷たい『氷の王子様』だと思っていたけれど、こうやって隣を歩いてくれていると、なんだかすごく頼もしい。
階段を降りきると、そこはレンガ造りの巨大な地下水路になっていた。
足元には冷たい水がチョロチョロと流れており、壁には古びた鉄製のパイプや歯車が剥き出しになっている。
『こちらS.O.S本部! ふたりとも聞こえる? 今、ちょうど時計塔の真下あたりに到達したよ!』
インカムからカイ先輩の明るい声が届く。
「ああ、聞こえている。今のところ目立った障害はないが――」
神臣先輩が言葉を途切れさせた。
懐中電灯の光が照らし出したのは、水路を完全に塞ぐように聳え立つ、頑丈な『鉄格子の水門』だった。
鉄格子の中央には、真鍮製の大きな丸い盤面が取り付けられている。
「出た……! 最初の障害ですね!」
私が駆け寄って盤面を観察すると、そこには一から九までの数字が刻まれたダイヤルと、三本の針がついていた。
「これ……普通のダイヤル錠じゃない。圧力計と連動した『水圧式バランス・ロック』だわ!」
「水圧式……? どういう構造だ?」
「水門の向こう側に溜まっている水圧を利用して、特定の重さと圧力のバランスが一致した時だけシリンダーが回る仕組みです。……あっ! 見てください、上!」
私が指差した先――天井の隙間から、ポタポタと水滴が垂れる速度が急激に速くなっていた。
ギギギギ……と、不気味な重低音が水路全体に響き渡る。
『やばい! ふたりとも気をつけて!』
インカム越しにカイ先輩の焦った声が跳ね上がった。
『その水門、侵入者を検知すると上流のアクア・トラップが作動する仕組みになってる! あと三分で水門の手前側の区画が水没しちゃうよ!』
「なに……!? 三分で水没だと!?」
神臣先輩が目を見開き、即座に私を背後に庇おうとした。
「鈴宮、一度階段まで退避するぞ! 水没したらひとたまりもない!」
「ダメです! 一度退避したら、このトラップは完全に水圧で固着して二度と開かなくなります!」
私は神臣先輩の手を振り払い、水門の盤面へ飛びついた。
「三分あれば十分です! カイ先輩、聴診センサーの感度を最高に上げて!」
『う、うん! 了解!』
両耳にイヤホンを押し込み、特注のチタン製ピックをダイヤルの隙間に滑り込ませる。
迫り来る水の音。足元を侵食していく冷たい水流。
だけど、私の意識は一瞬で無音の世界へと没入した。
『水圧で押しつけられている座金の抵抗……重い! だけど、内部の圧力弁が開放される「遊び」のポジションが必ずあるはず……!』
指先を通じて、細いチタンピックが内部の微小な歯車に触れる。
カチ……ギギ……。
「そこ……っ!」
私はダイヤルを右へ二回転半、そして左へ微調整しながら、テンションアームで内部の弁を押し上げた。
――バシュッ!!
高圧の空気が抜ける爽快な音が響き、三本の針がピタリと中央の刻印で重なった。
重厚な鉄格子が、ゴゴゴ……と音を立てて天井へと引き上げられていく。水門の向こう側へと溜まっていた水が流れ出し、足元の水位がスッと下がった。
「ふぅ……! 解除完了です!」
汗を拭って振り返ると、神臣先輩が呆然とした顔で私を見つめていた。
「……たった一分半か。相変わらず、お前の指先は恐ろしいな」
「へへっ、カイ先輩の特注ツールのおかげですよ!」
ドヤ顔で八重歯を見せる私に、神臣先輩はふっと口元を緩めると、私の頭の上にぽんと手を置いた。
「よくやった、鈴宮。……助かった」
「え……あ……」
頭の上に伝わる、大きな手の温もり。
普段は意地悪でドSな先輩が、すごく優しく私を褒めてくれている。
『う、うわわわわっ……!? な、なにこれ! 急に優しくされると、心臓が爆発しそうになるんだけど……!?』
一瞬で顔が茹でダコのように熱くなり、私は慌てて神臣先輩の手を振り払った。
「あ、条件三号を忘れないでくださいね! 対等なバディなんですから、子供扱い禁止です!」
「フッ……照れているのか? 可愛いところもあるんだな」
「照れてません! ほら、先を急ぎますよっ!」
大慌てで水門の奥へ駆け出す私を、神臣先輩が楽しそうに追いかけてくる。
水門を抜けて、暗く長い地下道をさらに奥へと進むこと数分。
やがて、広いドーム状の空間へと出た。
その中央に――『それ』は待っていた。
周囲のレンガ造りの壁とは明らかに異質な、漆黒の金属で覆われた巨大な両開きの扉。
表面には無数のギアとチェーンが複雑に組み込まれ、中央には気味の悪い「目玉」のレリーフ。そして何より異様なのは――扉の横に、現代の液晶画面のような青い光を放つ『鉱石端末』が埋め込まれていることだった。
「これが……『第一の開かずの扉』……」
神臣先輩が息をのむ。
百年前のカラクリ技術と、現代のテクノロジーが融合した、不気味で美しい謎の扉。
私は引き寄せられるように扉の前へ歩み寄り、漆黒の金属表面にそっと触れた。
――ズキン。
その瞬間、指先から電撃のような微小な振動が走り抜けた。
『な……なにこれ……!? 普通の鍵じゃない……! 物理的なロックと、暗号解読のプロテクトが完全に融合してる……!?』
私の「鍵オタク」としての本能が、今までにない最大の危険とワクワクを察知して、激しく警鐘を鳴らしていた。