目立たない総務の私ですが、ハイスペック副社長がジレ甘です
真由は​呼び止められ、振り返った。

そこには相変わらず、感情を削ぎ落とした副社長の姿がある。

​「今回の案件、迅速な対応だった。評価する」

​「……恐縮です。失礼いたします」

​真由はドアを閉め、廊下に出た瞬間、そっと胸に手を当てて小さく息を吐いた。

​言葉の端々、あるいは書類を受け取る瞬間に一瞬だけかすめた視線の深さ。

完璧な『副社長と総務部員』を演じ切る彼の手腕に感嘆しながらも、その冷徹な仮面の裏にある「ただの男」としての鼓動を、自分だけが知っているという事実。

真由の胸の奥を静かに熱く焦がしていた。

​そしてその日の夜。

真由のスマートフォンに一通の短いメッセージが届いた。

​『昼間の補正資料、見事だった。公の場での君の毅然とした姿は誇らしくもある。が……指1本触れられない時間は、実に不毛だな。週末、いつもの場所で待っている』

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