放課後図書室、影のキス
カチ、コチ、と、夕暮れの図書室に古い柱時計の音だけが響いている。

窓際の席、オレンジ色の西日に照らされた彼女の身体は、

ガラス細工のように、向こう側の本棚が透けて見えていた。


「ねえ、湊くん」


彼女は悪戯っぽく微笑んで、僕の目の前にそっと掌を差し出す。

重ねようとした僕の右手が、冷たい空気を切って、彼女の身体をすり抜けた。

触れられないんだ。抱きしめることもできないんだ。

そして、この放課後が終われば、彼女は僕のすべてを忘れてしまう。


それでも、僕らは恋をした。




時計の針が、二人の終わりの時間を刻み続ける中で。
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