後ろの魔王様
ああ言えば、こう言う、だ。

わざとらしく大きなため息をついて、首を振る。

すると英くんは、私のため息をどう受け取ったのか「ここちゃん困らせんなよ」と足元に倒れていた男子生徒を軽く蹴った。

……違う、そうじゃない。
困らせてるのはキミ、英くんだよ。


「あ、唇の端っこ切れてるよ」

「んあ、ホントだ〜?痛いと思ったァ」


さして気にするそぶりも見せず、舌で血を舐め取る。

汚いからやめなさいって言ってるのに、これも言うことをきかない。

私はブレザーのポケットに入れている絆創膏を一枚取り出して、英くんの唇の端っこに貼り付けた。


「あ、絆創膏だァ」


目尻をこれでもかと下げて、英くんが貼りたての絆創膏に触れる。


英くんは私から渡す絆創膏をそれはそれは大切にする。

私が替えてあげないとずっと付けている。

さすがに衛生的にも良くないから、ちゃんと見てあげないといけないので厄介だ。


「ねェ、思い出してくれた?」

「絆創膏のこと?」

「そ、小学生のときにオレに絆創膏渡した日のこと!」


英くんは初めて会ったときからずっと言ってくる。


『あの日助けてもらった英リオウでぇす!』


そう言って、小さいフリーザーパックに入った黄色い花柄の絆創膏を見せられたのがことの始まり。

どうやら小学生の頃の私は、英くんにその絆創膏を渡したらしい。

……らしい、というのも、私はまったく覚えてないからだ。


もちろん今日も、覚えてるわけもなく。
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