後ろの魔王様

第一話

教室の後ろの扉から入り、窓際の後ろから二番目の席に座る。その後ろは、英くんの席。

後ろでガタンッ、と荒々しく椅子が引かれ、その後すぐにふわふわの金髪が机に突っ伏す。

早くもお昼寝の体勢に入ったらしい。


私はため息をつき、机の中から日本史の教科書を出す。

すると、遠くでクラスメイトと話していた親友の陽奈(ヒナ)が近づいてきて、私の隣に座った。


「心、おつー」

「他人事だと思って……」

「他人事だし。で、今日はどんな理由?」

「私の悪口言ってたから?とかで……」

「へぇ……ご主人様には忠実だねー」


そのわりに、言うことをあまり聞いてくれないのはどういう了見だろうか。


「だからって喧嘩しなくていいのに……」

「『魔王』喧嘩大好きだからしょーがないね」


今はスヤスヤとこどものように眠っている英くん。

喧嘩が大好きな暴れん坊。

通称『魔王』。


今日は無表情だったけれど、テンションが上がれば笑いながら人を殴る。
それはもう、声高らかに笑って……。

その姿が『魔王』のようだから、いつの間にかそう呼ばれるようになったらしい。


「はぁ……喧嘩するたびに呼ばれる私の身にもなってほしいよ……」


昼休み終了のチャイムが鳴り、陽奈が自分の席に戻る。

クラスメイトも自分たちの席に戻り、日本史の先生が前の扉から入ってきた。


教科書を開き、ふと考える。


そういえば、いつからこの日常が当たり前になったんだっけ──。
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