唯織くんは素直にデレない
「ううう上野(うえの)っ」

慌てて方向転換しようとしたが、もう遅い。

彼女――上野 紬生(つむぎ)は彼が隠れるより早く、唯織の姿を見留(みと)めたようだ。

途端(とたん)に眉をひそめる。

刺すような鋭い視線が唯織を突き刺した。

「ちっ…くしょ」

そして。

「うぉらぁぁあッッ!!」

唯織は腹の底からそう叫び、隣から伸びてきた比土の腕を掴んで自分の方へ、グイッと力いっぱい引き寄せた。

突然のその声と行動に比土は不意をつかれ、腕が引かれた方へとバランスを崩す。

すかさず、その脳天に

ゴッ

おもいっきりヒジを突き刺す。

「ぐわッ!!」

間髪入れず、次にツレ2人。

ヤツらのみぞおちに

左脚。

右脚。

交互に素早く回し蹴(げ)りを食らわす。

同時に崩れ落ちる直前だった比土の腕を再びつかんで

ブンッ

蹴りのダメージでよろめくツレたちに向かって投げ飛ばした。

衝突した3人は次々順番に折り重なって倒れていく。

その様子を唯織は仁王立ちしたまま静かに見下ろしていた。

…やっちまった…。
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