モテ男とデキ女の奥手な恋
風呂に入って就寝の準備ができた頃には、もう深夜2時になろうとしていた。
「……抱きたい、って言って、抱かないの?」
さっさと電気を消して二人でベッドに入り込み、橘を抱きまくら代わりにしながら目を閉じてしばらくしたとき、ためらうように橘が言った。
「疲れてるだろ」
「まあ……そうだけど」
俺は喉の奥で笑う。
「楽しみにしてた?」
「ち、違、そんなんじゃ」
橘は慌てて否定しようとしたが、
「……まあ、ちょっとは」
思いの外素直に認めた。
「そっか」
俺はくすりと笑って橘の髪を撫で、額に口づける。
橘は少し緊張するように身体を強張らせ、目を閉じた。ふと意地悪したくなって、その頬を撫でる。
「俺の誕生日プレゼントなんだろ?」
橘はちらりと閉じた目を開けた。
「そっちから楽しませてくれたりしないの?」
橘は驚いた顔をした後、目さ迷わせてから、決意したように俺の唇に自分のそれを押し当てた。
「……それだけ?」
低く静かに問うた声はわずかに掠れる。
橘の目が段々潤んでくるのが見えた。
「また、お色気神崎だ」
ーーなんだよそれ。
「嫌なの?俺のお色気モードは」
自覚はないが聞いてみる。
「嫌じゃないけど……なんか、慣れない」
直視できないとでも言うように目を反らした。俺はその姿にくすりと笑って、
「で?」
「え?」
「キスの他には?」
橘はうろたえて目線をさ迷わせた。
「ええと」
暗闇では顔色の変化は分からないが、気恥ずかしそうに目を伏せる。
「い、一応、全く何も考えてなかったわけじゃないんだけど、その」
ーーもしかして。
俺は手元の明かりを点けた。急な明るさに、橘は暗闇に慣れつつあった目を咄嗟に覆う。その隙に、パジャマ代わりのスウェットに手を差し入れた。
「きゃあ、ちょ、ちょっと」
「当たり?」
橘が慌てて俺の手を押さえるが、俺はにやりと笑ってその手を剥ぎ取る。
「当たりとか、そんなんじゃなくて!もっとムードってもんが」
「お前のお誘い待ってたら日が明けちまうだろ」
「で、電気、明るすぎ」
「せっかく新調した下着見るのに暗くしてどうする」
バタバタともがく橘相手に、ムードも何もあったもんじゃない。隙をついてスウェットをたくし上げると、白い下着があらわになった。
真っ赤になった橘は、俺の手を降ろさせようと必死になっている。俺は笑いながらまたその髪から頬を撫で、鼻先に鼻先を擦り付けた。
「俺だけしか見ないから」
「他の人に見られても困る」
「それは俺も困る。ーー手、離して」
至近距離での囁きに、橘は諦めておずおずと手を離した。
「……綺麗だよ」
スウェットの下にのぞく肌をゆっくりと撫でながら微笑む。
橘は真っ赤になったまま手で顔を覆った。
「恥ずかしい」
「何で?」
「三十過ぎて白い下着で男を誘惑なんて」
「俺、別にリクエストしてないけど」
恥ずかしいんだったら他の色にすればよかったんじゃないか。というか、色ひとつで何を恥ずかしがってるのか、いまいち分からない。
「だって、ジョーが」
「ジョー?」
「マーシーは意外と清純派に弱いんじゃないかって」
俺はがっくり肩を落とした。
「俺そんな話した記憶ないぞ。妄想だろ、あいつの」
「だって、どんなのがいいか分からなかったから」
橘はわたわたと慌てた。顔は相変わらず真っ赤なままで、半ば無意識なのか、胸元に繰り上がったスウェットをおろそうとしている。
「男の人の意見なら参考になるかなって」
男っつったって。あんな肉食獣に俺の好みが分かってたまるか。
「清純派、ねぇ」
ーーまあ、完全に間違ってるわけでもないか。
「あんまりごちゃごちゃしてないのがいいかな」
「え?」
「年始の着物はよく似合ってた」
橘はほっとしたように息をついた。どうした、と問うと、照れ臭そうに目を反らす。
「レースとか、いろいろついてて可愛いのにしようか迷ったけど、こっちにしてよかった」
確かに、橘のいつものファッションからすると、この下着のデザインはシンプルかもしれない。
「お前なりに、俺のこと考えて選んでくれたんだな。ありがと」
俺は橘の頭をぽんぽんとたたき、その手を頬に滑らせてにやりとした。
「ーーま、脱いじゃえば一緒だけどな」
「えっ」
この期に及んで慌てる橘の唇を、自分の唇で封じる。しばらくその唇を堪能した後、
「お前が誕生日プレゼントなんだろ」
耳元で囁くと、橘は震える息と共に頷いた。
「……抱きたい、って言って、抱かないの?」
さっさと電気を消して二人でベッドに入り込み、橘を抱きまくら代わりにしながら目を閉じてしばらくしたとき、ためらうように橘が言った。
「疲れてるだろ」
「まあ……そうだけど」
俺は喉の奥で笑う。
「楽しみにしてた?」
「ち、違、そんなんじゃ」
橘は慌てて否定しようとしたが、
「……まあ、ちょっとは」
思いの外素直に認めた。
「そっか」
俺はくすりと笑って橘の髪を撫で、額に口づける。
橘は少し緊張するように身体を強張らせ、目を閉じた。ふと意地悪したくなって、その頬を撫でる。
「俺の誕生日プレゼントなんだろ?」
橘はちらりと閉じた目を開けた。
「そっちから楽しませてくれたりしないの?」
橘は驚いた顔をした後、目さ迷わせてから、決意したように俺の唇に自分のそれを押し当てた。
「……それだけ?」
低く静かに問うた声はわずかに掠れる。
橘の目が段々潤んでくるのが見えた。
「また、お色気神崎だ」
ーーなんだよそれ。
「嫌なの?俺のお色気モードは」
自覚はないが聞いてみる。
「嫌じゃないけど……なんか、慣れない」
直視できないとでも言うように目を反らした。俺はその姿にくすりと笑って、
「で?」
「え?」
「キスの他には?」
橘はうろたえて目線をさ迷わせた。
「ええと」
暗闇では顔色の変化は分からないが、気恥ずかしそうに目を伏せる。
「い、一応、全く何も考えてなかったわけじゃないんだけど、その」
ーーもしかして。
俺は手元の明かりを点けた。急な明るさに、橘は暗闇に慣れつつあった目を咄嗟に覆う。その隙に、パジャマ代わりのスウェットに手を差し入れた。
「きゃあ、ちょ、ちょっと」
「当たり?」
橘が慌てて俺の手を押さえるが、俺はにやりと笑ってその手を剥ぎ取る。
「当たりとか、そんなんじゃなくて!もっとムードってもんが」
「お前のお誘い待ってたら日が明けちまうだろ」
「で、電気、明るすぎ」
「せっかく新調した下着見るのに暗くしてどうする」
バタバタともがく橘相手に、ムードも何もあったもんじゃない。隙をついてスウェットをたくし上げると、白い下着があらわになった。
真っ赤になった橘は、俺の手を降ろさせようと必死になっている。俺は笑いながらまたその髪から頬を撫で、鼻先に鼻先を擦り付けた。
「俺だけしか見ないから」
「他の人に見られても困る」
「それは俺も困る。ーー手、離して」
至近距離での囁きに、橘は諦めておずおずと手を離した。
「……綺麗だよ」
スウェットの下にのぞく肌をゆっくりと撫でながら微笑む。
橘は真っ赤になったまま手で顔を覆った。
「恥ずかしい」
「何で?」
「三十過ぎて白い下着で男を誘惑なんて」
「俺、別にリクエストしてないけど」
恥ずかしいんだったら他の色にすればよかったんじゃないか。というか、色ひとつで何を恥ずかしがってるのか、いまいち分からない。
「だって、ジョーが」
「ジョー?」
「マーシーは意外と清純派に弱いんじゃないかって」
俺はがっくり肩を落とした。
「俺そんな話した記憶ないぞ。妄想だろ、あいつの」
「だって、どんなのがいいか分からなかったから」
橘はわたわたと慌てた。顔は相変わらず真っ赤なままで、半ば無意識なのか、胸元に繰り上がったスウェットをおろそうとしている。
「男の人の意見なら参考になるかなって」
男っつったって。あんな肉食獣に俺の好みが分かってたまるか。
「清純派、ねぇ」
ーーまあ、完全に間違ってるわけでもないか。
「あんまりごちゃごちゃしてないのがいいかな」
「え?」
「年始の着物はよく似合ってた」
橘はほっとしたように息をついた。どうした、と問うと、照れ臭そうに目を反らす。
「レースとか、いろいろついてて可愛いのにしようか迷ったけど、こっちにしてよかった」
確かに、橘のいつものファッションからすると、この下着のデザインはシンプルかもしれない。
「お前なりに、俺のこと考えて選んでくれたんだな。ありがと」
俺は橘の頭をぽんぽんとたたき、その手を頬に滑らせてにやりとした。
「ーーま、脱いじゃえば一緒だけどな」
「えっ」
この期に及んで慌てる橘の唇を、自分の唇で封じる。しばらくその唇を堪能した後、
「お前が誕生日プレゼントなんだろ」
耳元で囁くと、橘は震える息と共に頷いた。