恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~【完結】
「ホテルに事情を説明して、館内アナウンスをかけさせましょう。このホテルのオーナー陣にはうちの医療機器導入でお世話になっていますから、支配人直通の連絡先を知っています。それと、私の車のドライバーにも周辺の路地を調べさせます。スマホが落ちているかもしれませんからね」

 神楽坂は手際よくスマートフォンを取り出すと、ホテルの支配人へ直々に連絡を入れ、矢継ぎ早に指示を出し始めた。
 先ほどまでの妖しく不気味な雰囲気は嘘のように消え去り、そこにあったのは大手医療機器メーカーの取締役として日頃から危機管理と組織指揮に長けた、頼もしい大人の男の姿だった。

「神楽坂さん、意外と優しいところありますよね」
「そう目を見開かないでください。目の前で子供に泣かれては、さすがに寝覚めが悪いというだけですよ」

 神楽坂は少し照れくさそうにふいと視線を逸らすと、すぐにホテルのセキュリティ責任者をその場へ呼び寄せた。
 的確な指示と、配下をフルに動かして一生懸命に動いてくれる彼の横顔を見つめながら、和香は心の中で静かに息を吐いた。

(……この人は、決して根っからの悪い人じゃないんだろうなぁ)

 強引で、素直になれなくて、手段を選ばない不器用なところはあるけれど、困っている子供を前にして見捨てられない優しさも確かにある。
 彼の根底にある人間性に触れ、和香の警戒心はほんの少しだけ和らいでいった。
そうしてホテルのエントランス付近で捜索を始めてから、わずか十分ほどが経った頃。
「和香さん、」
夜の静寂を切り裂くように、聞き馴染んだ低い声が響いた。
振り返ると、息を少し乱した帆高が、大股でこちらへ駆け寄ってくるところだった。事前に送っておいたメッセージと位置情報を頼りに、急いで駆けつけてくれたのだろう。
「帆高くん……、」
「大丈夫ですか。怪我はありませんか」
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