恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~【完結】
その日の日中

 業務で1階のロビー付近を通りかかった和香は、受付周辺でただならぬ不穏な空気が漂っていることに気づいた。

「ですから!私は久東帆高さんと親しいものでして!本家同士もお付き合いがあって……っ!」
「お気持ちは分かりますが、本日はあいにく出張で終日不在にしております。それに、アポイントのない方のお呼び出しや社内へのご案内は固く禁じられておりますので、お引き取りください」

 セキュリティゲートの前で、受付嬢と警備員に厳しく入館を拒否され、必死に駄々をこねているのは、白いスーツ姿の菜子だった。

(菜子さん?どうして会社にまで……)

 あまりの必死さに和香が足を止めて困惑していると、人目を探すように視線を泳がせていた菜子が、パッと表情を明るくして和香の存在に気づいた。

「あ……、和香さん!」

 セキュリティの制止を振り切る勢いで、菜子が突進するように和香の元へ駆け寄ってくる。

「和香さん!お願い、教えて!帆高くん、どこに出張に行ってるの?電話をかけても全然出てくれなくて……っ!LINEも既読がつかないの!」

 なりふり構わず両手を掴んでこようとする菜子の勢いに、和香はとっさに一歩身を引き、落ち着いた声で静かに語りかけた。

「……菜子さん。夫の出張先やスケジュールを、個人的にお教えすることはできません。それに、ここは会社です。このような場所で大声を上げて騒がれるのは、周りの社員やお客様への大変なご迷惑になります。もう会社へ来るのはおやめください」
「そんな……!私、ただ帆高君に会って話がしたいだけなのに……っ!」



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