恋の模範解答を教えて~年下君の甘い執着に落とされまして~【完結】
「和香さん、」
「あ……、えっと……」
彼の低い声が耳に心地よく響く。
頬に触れられるのも、こうして至近距離で見つめられるのも少しも嫌なんかじゃなかった。
嫌どころか、彼の指先が触れている部分から熱が広がり、胸の奥で心臓がうるさいほどの高鳴りを打ち続けている。
(どうしよう……このままじゃ、私……)
これ以上彼の瞳を見つめていたら、自分の中の理性が溶けてなくなってしまう。
たまらず和香がそっと目を逸らした、まさにその時だった。
静まり返ったリビングに、無機質な電子音が響き渡った。
床に置いた鞄の中で、スマートフォンがけたたましく振動している。
「あ……ごめん、なさい……!」
我に返った和香は、急激に上昇していた身体の熱を必死に冷ますようにして、弾かれたように帆高から距離を取った。
パニックのまま鞄からスマホを取り出すと、ディスプレイに表示された相手の画面すらまともに確認せず、逃げるように通話ボタンを押して耳に当ててしまった。
「もしもし?和香?」
受話器の向こうから聞こえてきたのは、冷たく厳格な母親の声だった。
一瞬で現実へと引き戻され、和香の表情から温度が消える。自然と眉間に深いシワが寄った。
そのまま帆高から離れるようにして壁際へ移動し、声を潜めて短く告げる。
「ごめん、お母さん。今、出先で電話出られないから切るね」
「ちょっと待ちなさい。来週末、実家に戻ってきなさいね。あなたの結婚相手になる瑠衣さんが、わざわざお見合いのご挨拶にいらしてくださるから」
「っ……!ちょっと待ってよ。勝手に決めないでって……言ってるのに……っ!」
冷静さを保とうとしていたのに、怒りと焦りで自然と語尾が荒くなっていく。
「私は、あの人と結婚する気はないの。……絶対に、ないから!」
「そんな子どもみたいなこと言ったって、仕方がないでしょう? これ以上お父さんの顔に泥を塗る気ですか。とにかく、話はもう決まっていますからね」
母親の冷酷で一切の反論を許さない鋭い声に、和香は息を呑み、思わず押し黙ってしまった。
幼い頃から抗うことを許されなかった親の絶対的な支配力。その重圧が、再びズシリと首元に伸しかかってくる。
「じゃあ、来週末待ってるわね」
一方的にそれだけを言い残すと、ツーツーと無機質な切断音が虚しく響いた。
和香は、固まったまま無言でスマホを鞄の底へと戻した。
もう、帆高の顔をまともに見ることなんてできなかった。こんな無様で追い詰められた自分を、これ以上彼に見せたくなかった。
「あ……、えっと……」
彼の低い声が耳に心地よく響く。
頬に触れられるのも、こうして至近距離で見つめられるのも少しも嫌なんかじゃなかった。
嫌どころか、彼の指先が触れている部分から熱が広がり、胸の奥で心臓がうるさいほどの高鳴りを打ち続けている。
(どうしよう……このままじゃ、私……)
これ以上彼の瞳を見つめていたら、自分の中の理性が溶けてなくなってしまう。
たまらず和香がそっと目を逸らした、まさにその時だった。
静まり返ったリビングに、無機質な電子音が響き渡った。
床に置いた鞄の中で、スマートフォンがけたたましく振動している。
「あ……ごめん、なさい……!」
我に返った和香は、急激に上昇していた身体の熱を必死に冷ますようにして、弾かれたように帆高から距離を取った。
パニックのまま鞄からスマホを取り出すと、ディスプレイに表示された相手の画面すらまともに確認せず、逃げるように通話ボタンを押して耳に当ててしまった。
「もしもし?和香?」
受話器の向こうから聞こえてきたのは、冷たく厳格な母親の声だった。
一瞬で現実へと引き戻され、和香の表情から温度が消える。自然と眉間に深いシワが寄った。
そのまま帆高から離れるようにして壁際へ移動し、声を潜めて短く告げる。
「ごめん、お母さん。今、出先で電話出られないから切るね」
「ちょっと待ちなさい。来週末、実家に戻ってきなさいね。あなたの結婚相手になる瑠衣さんが、わざわざお見合いのご挨拶にいらしてくださるから」
「っ……!ちょっと待ってよ。勝手に決めないでって……言ってるのに……っ!」
冷静さを保とうとしていたのに、怒りと焦りで自然と語尾が荒くなっていく。
「私は、あの人と結婚する気はないの。……絶対に、ないから!」
「そんな子どもみたいなこと言ったって、仕方がないでしょう? これ以上お父さんの顔に泥を塗る気ですか。とにかく、話はもう決まっていますからね」
母親の冷酷で一切の反論を許さない鋭い声に、和香は息を呑み、思わず押し黙ってしまった。
幼い頃から抗うことを許されなかった親の絶対的な支配力。その重圧が、再びズシリと首元に伸しかかってくる。
「じゃあ、来週末待ってるわね」
一方的にそれだけを言い残すと、ツーツーと無機質な切断音が虚しく響いた。
和香は、固まったまま無言でスマホを鞄の底へと戻した。
もう、帆高の顔をまともに見ることなんてできなかった。こんな無様で追い詰められた自分を、これ以上彼に見せたくなかった。