俺様で冷徹なハイスペック医師は ツンデレで不器用で激甘な素顔を隠せない
プロローグ
病院の夜は、独特の匂いがする。

​消毒液のツンとした匂いと、清拭用の綿花、そしてどこか冷たいエアコンの風が交ざり合った、静まり返った空気。

​ナースステーションの遠い足音と、不規則のリズムで刻まれる心電図の電子音だけが、葵が生きていることを微かに証明していた。

​昼間の出来事が、ふと葵の頭をよぎる。

​今日の午後は、月に1度の精密心電図と心エコーの検査日だった。

​車椅子で検査室へ向かう途中。

廊下ですれ違った研修医たちが、葵の車椅子を押していたベテラン看護師に青ざめた顔で話しているのを目撃した。

​「……ねえ、今日の御堂先生、いつにも増してピリついてない?」

​「カンファレンスで若い先生の症例発表をコテンパンに論破したらしいわよ。『その程度の考察で患者の胸を開く気か』って……氷の仮面の下の眼光が凄すぎて、誰も息ができなかったって」

< 1 / 42 >

この作品をシェア

pagetop