俺様で冷徹なハイスペック医師は ツンデレで不器用で激甘な素顔を隠せない
律は静かで、低く落ち着いた声で伝えた。

​「血流動態の、揺らぎ……?」

​「ああ。心筋の深部に潜む病の根が、最後にあがきを見せているに過ぎない。……俺がその代謝障害と血管スパズムを完全に抑え込む」

​律は葵の手をそっと自分の胸元——スクラブ越しに聞こえる、規則正しく力強い心音の位置へと静かに引き寄せた。

​「葵。葵の命は、俺が繋ぎ止めた。……心筋の局所変化ごときに葵を奪わせる気など、毛頭ない。葵はただ、俺の手だけを信じているといい」

​律のどこまでも静かで、ブレのない呼びかけ。

包み込まれた手から伝わる体温と、寸分の狂いもなく葵の命を守ろうとする律の手つきには、恐ろしいほどの執着と愛が満ちていた。

​葵は律の指先から伝わる絶対的な強さと温もりに、自分の病が決して甘いものではないことを悟った。


それでも、葵は目の前の律が全身全霊をかけて自分を守り抜こうとしていることを知り、胸を強く打たれた。

​
< 72 / 122 >

この作品をシェア

pagetop