転校生と私のひ・み・つ
ある日、私のクラスに転校してきたのは——
まさかの、あの人でした。
「……えっ!?」
「みーなーみーちゃん!」
「わぁっ!?」
突然、後ろから名前を呼ばれて、思わず肩が跳ねる。
振り返ると、そこにいたのは私の大親友、如月詩音(きさらぎ しおん)ちゃん。
詩音ちゃんは、ふんわりとした雰囲気がかわいらしい女の子。
そうそう、まだ自己紹介をしていなかったね!
私の名前は、白鳥みなみ(しらとり みなみ)。
現在、中学2年生!
あの人が転校してくるまでは、ごく普通の学校生活を送っていました。
……そう、あの日までは。
ある日の朝。
先生が教室に入ってくるなり、黒板に何かを書き始めた。
そこに書かれていたのは——
『一ノ瀬 奏(いちのせ かなで)』
「……うそでしょ?」
思わず声が漏れそうになる。
いやいや、まさかね。
そんな偶然、あるわけない。
……そう思っていたのに。
「それじゃあ、入ってきてください」
ガラッ。
教室のドアが開いた瞬間、私の期待は見事に打ち砕かれた。
そこに立っていたのは、紛れもなく——
私が一番会いたくて、一番会いたくなかった人。
「転校生の一ノ瀬奏くんです。みんな、仲良くしてあげてね。席は……」
お願いだから、私の近くはやめて!
心の中で必死に祈る。
……けれど。
「白鳥みなみさんの隣ね」
……終わった。
私の平穏な学校生活、終了のお知らせ。
だって、よりによって隣の席!?
どうしてそこだけ都合よく空いてるの!?
「よろしくね、みなみちゃん!」
「えっ……あ、うん。よ、よろしく……!」
……って、ちょっと待って。
なんで初対面なのに、いきなり『みなみちゃん』呼びなの!?
案の定、教室中の視線が一斉に私たちへ集まった。
ですよねー!!
初対面で名前に『ちゃん』付けなんて、普通しないよね!?
お願いだから、これ以上目立たせないで!!
そんな私の願いが通じたのか、ちょうどチャイムが鳴った。
助かった……!
……でも。
放課後、私はもっと大変なことになるなんて、このときはまだ知らなかった。
放課後。
私は、朝からずっと落ち着かなかった。
だって……。
「みなみー!」
「ひゃあっ!?」
突然、目の前に現れた奏くんに、思わず変な声が出た。
「な、ななな、なんでここにいるの!?」
「なんでって、みなみと帰ろうと思って」
「む、無理に決まってるでしょ! 誰かに見られたらどうするの!?」
「別によくない?」
「よくないっ!!」
奏くんは、きょとんとした顔で私を見つめた。
……もう!
どうしてこの人は、こんなに平然としていられるの!?
私たちが婚約者だって学校のみんなに知られたら、絶対に大騒ぎになる。
だって、奏くんは——。
顔もかっこいいし、優しいし、きっとすぐに人気者になる。
そんな奏くんの婚約者が、私だなんて。
そう。私と奏くんの秘密は婚約者という事なの。
……絶対に釣り合わないよ。
「……みなみ?」
「えっ?」
「何、ぼーっとしてんの?」
「な、なんでもない!」
「ふーん?」
奏くんは、なぜか楽しそうに笑った。
「ま、いいや。じゃあ、またあとでな」
「あとでって……?」
「家で会えるだろ?」
「~~~っ!!」
そ、そうだった……!
私たち、家では普通に会ってるんだった!!
……って、普通じゃないよね!?
婚約者が毎日のように家に来るなんて、普通じゃないよね!?
私は真っ赤になった顔を両手で覆った。
そんな私を見て、奏くんは小さく笑った。
「ほんと、みなみってかわいいよな」
「なっ……!?」
「じゃあな!」
そう言って、奏くんは行ってしまった。
……ずるい。
ほんとに、ずるい。
そんなこと言われたら、もっと好きになっちゃうじゃん。
その日の夜。
夕食を食べ終えて、部屋でのんびりしていたときだった。
ピンポーン。
……ん?
誰だろう?
私は玄関へ向かい、ドアを開けた。
「お邪魔しまーす!」
「……って、奏くん!?」
そこに立っていたのは、やっぱり奏くんだった。
「ちょ、ちょっと! 勝手に入らないでよ!」
「えー? いいじゃん」
「よくない!」
「はいはい」
そう言いながらも、奏くんは慣れた様子で靴を脱いだ。
……最近、ずっとこんな感じ。
うちの親は仕事で留守にしていることも多いけれど、奏くんはまるで自分の家みたいにやって来る。
「……ねえ、奏くん」
「ん?」
「どうして、うちの学校に転校してきたの?」
ずっと気になっていたこと。
本当は、聞くのが少し怖かった。
すると、奏くんは私をまっすぐ見つめた。
「決まってんじゃん」
「……え?」
「みなみがいるから」
「……っ!?」
心臓が、ドクンと跳ねた。
「みなみと違う学校なの、ずっと嫌だったんだよ」
「で、でも……! 転校してきたら、婚約者同士だってバレるかもしれないじゃん!」
「俺は、バレてもいいけど?」
「よくないよ!」
思わず大きな声が出てしまった。
だって、怖いんだもん。
奏くんと私が婚約者だって知られたら、みんなに何を言われるか分からない。
奏くんのことが好きな女の子だって、きっとたくさんいる。
そんな子たちに嫌われたら……。
「……みなみ」
奏くんの声が、少しだけ真剣になった。
「俺は、みなみ以外を好きになるつもりなんてないよ」
「……!」
「誰に何を言われても、俺が好きなのはみなみだけだから」
顔が、一気に熱くなる。
……もう。
どうして、そんなことを真顔で言えるの!?
「……ばか」
「ん?」
「……奏くんの、ばかっ!」
私は顔を隠して、そっぽを向いた。
すると、奏くんはくすっと笑った。
「はいはい。じゃあ、また明日な」
「……うん」
玄関で見送ったあと、私はその場にしゃがみ込んだ。
……本当に、ずるい。
あんなこと言われたら、期待しちゃうじゃん。
私は、奏くんのことが大好き。
でも、恥ずかしくて、どうしても素直になれない。
いつかちゃんと、この気持ちを伝えられる日が来るのかな……。
そして、翌朝。
いつものように詩音ちゃんと待ち合わせをして、学校へ向かった。
「みなみちゃん、今日なんか元気なくない?」
「えっ!? そ、そんなことないよ!」
「ほんとー?」
詩音ちゃんは、不思議そうに首をかしげた。
……危ない、危ない。
奏くんのことを考えていたなんて、絶対に言えない!
そんなことを話しているうちに、私たちは教室に到着した。
……げっ。
奏くん、もう来てる。
しかも、女の子と話してる!?
えっ、誰!?
気になって、つい足が止まった。
すると——。
「一ノ瀬くん。好きです。付き合ってください!」
……えっ!?
告白!?
告白してるの!?
しかも、相手はクラスのリーダー的存在、上野真衣(うえの まい)さん。
かわいくて、明るくて、男子にも人気がある女の子。
……そりゃ、奏くんのこと好きになるよね。
……って、何考えてるの、私!
すると、奏くんが口を開いた。
「ごめん」
「……え?」
「俺、好きな人がいるんだ」
……っ!
心臓が、ドキンと鳴った。
「俺は、白鳥みなみが好きなんだ。みなみ以外は愛さない」
…………え?
えええええええ!?
ちょ、ちょっと待って!!
なんで私の名前を言うの!?
婚約者同士だってバレちゃうじゃん!!
もしかしたら、バレてるんじゃない?
真衣さんは、驚いた顔をしたあと、泣きながら教室を出ていった。
……うそ。
どうしよう。
私は、そっと奏くんのほうを見た。
すると、奏くんと目が合った。
ニコッ。
……笑った!?
しかも、こっちを見て笑ったよね!?
絶対、わざとだ!!
私は慌てて目をそらした。
……もう、ほんとに。
私の学校生活、これからどうなっちゃうの!?
まさかの、あの人でした。
「……えっ!?」
「みーなーみーちゃん!」
「わぁっ!?」
突然、後ろから名前を呼ばれて、思わず肩が跳ねる。
振り返ると、そこにいたのは私の大親友、如月詩音(きさらぎ しおん)ちゃん。
詩音ちゃんは、ふんわりとした雰囲気がかわいらしい女の子。
そうそう、まだ自己紹介をしていなかったね!
私の名前は、白鳥みなみ(しらとり みなみ)。
現在、中学2年生!
あの人が転校してくるまでは、ごく普通の学校生活を送っていました。
……そう、あの日までは。
ある日の朝。
先生が教室に入ってくるなり、黒板に何かを書き始めた。
そこに書かれていたのは——
『一ノ瀬 奏(いちのせ かなで)』
「……うそでしょ?」
思わず声が漏れそうになる。
いやいや、まさかね。
そんな偶然、あるわけない。
……そう思っていたのに。
「それじゃあ、入ってきてください」
ガラッ。
教室のドアが開いた瞬間、私の期待は見事に打ち砕かれた。
そこに立っていたのは、紛れもなく——
私が一番会いたくて、一番会いたくなかった人。
「転校生の一ノ瀬奏くんです。みんな、仲良くしてあげてね。席は……」
お願いだから、私の近くはやめて!
心の中で必死に祈る。
……けれど。
「白鳥みなみさんの隣ね」
……終わった。
私の平穏な学校生活、終了のお知らせ。
だって、よりによって隣の席!?
どうしてそこだけ都合よく空いてるの!?
「よろしくね、みなみちゃん!」
「えっ……あ、うん。よ、よろしく……!」
……って、ちょっと待って。
なんで初対面なのに、いきなり『みなみちゃん』呼びなの!?
案の定、教室中の視線が一斉に私たちへ集まった。
ですよねー!!
初対面で名前に『ちゃん』付けなんて、普通しないよね!?
お願いだから、これ以上目立たせないで!!
そんな私の願いが通じたのか、ちょうどチャイムが鳴った。
助かった……!
……でも。
放課後、私はもっと大変なことになるなんて、このときはまだ知らなかった。
放課後。
私は、朝からずっと落ち着かなかった。
だって……。
「みなみー!」
「ひゃあっ!?」
突然、目の前に現れた奏くんに、思わず変な声が出た。
「な、ななな、なんでここにいるの!?」
「なんでって、みなみと帰ろうと思って」
「む、無理に決まってるでしょ! 誰かに見られたらどうするの!?」
「別によくない?」
「よくないっ!!」
奏くんは、きょとんとした顔で私を見つめた。
……もう!
どうしてこの人は、こんなに平然としていられるの!?
私たちが婚約者だって学校のみんなに知られたら、絶対に大騒ぎになる。
だって、奏くんは——。
顔もかっこいいし、優しいし、きっとすぐに人気者になる。
そんな奏くんの婚約者が、私だなんて。
そう。私と奏くんの秘密は婚約者という事なの。
……絶対に釣り合わないよ。
「……みなみ?」
「えっ?」
「何、ぼーっとしてんの?」
「な、なんでもない!」
「ふーん?」
奏くんは、なぜか楽しそうに笑った。
「ま、いいや。じゃあ、またあとでな」
「あとでって……?」
「家で会えるだろ?」
「~~~っ!!」
そ、そうだった……!
私たち、家では普通に会ってるんだった!!
……って、普通じゃないよね!?
婚約者が毎日のように家に来るなんて、普通じゃないよね!?
私は真っ赤になった顔を両手で覆った。
そんな私を見て、奏くんは小さく笑った。
「ほんと、みなみってかわいいよな」
「なっ……!?」
「じゃあな!」
そう言って、奏くんは行ってしまった。
……ずるい。
ほんとに、ずるい。
そんなこと言われたら、もっと好きになっちゃうじゃん。
その日の夜。
夕食を食べ終えて、部屋でのんびりしていたときだった。
ピンポーン。
……ん?
誰だろう?
私は玄関へ向かい、ドアを開けた。
「お邪魔しまーす!」
「……って、奏くん!?」
そこに立っていたのは、やっぱり奏くんだった。
「ちょ、ちょっと! 勝手に入らないでよ!」
「えー? いいじゃん」
「よくない!」
「はいはい」
そう言いながらも、奏くんは慣れた様子で靴を脱いだ。
……最近、ずっとこんな感じ。
うちの親は仕事で留守にしていることも多いけれど、奏くんはまるで自分の家みたいにやって来る。
「……ねえ、奏くん」
「ん?」
「どうして、うちの学校に転校してきたの?」
ずっと気になっていたこと。
本当は、聞くのが少し怖かった。
すると、奏くんは私をまっすぐ見つめた。
「決まってんじゃん」
「……え?」
「みなみがいるから」
「……っ!?」
心臓が、ドクンと跳ねた。
「みなみと違う学校なの、ずっと嫌だったんだよ」
「で、でも……! 転校してきたら、婚約者同士だってバレるかもしれないじゃん!」
「俺は、バレてもいいけど?」
「よくないよ!」
思わず大きな声が出てしまった。
だって、怖いんだもん。
奏くんと私が婚約者だって知られたら、みんなに何を言われるか分からない。
奏くんのことが好きな女の子だって、きっとたくさんいる。
そんな子たちに嫌われたら……。
「……みなみ」
奏くんの声が、少しだけ真剣になった。
「俺は、みなみ以外を好きになるつもりなんてないよ」
「……!」
「誰に何を言われても、俺が好きなのはみなみだけだから」
顔が、一気に熱くなる。
……もう。
どうして、そんなことを真顔で言えるの!?
「……ばか」
「ん?」
「……奏くんの、ばかっ!」
私は顔を隠して、そっぽを向いた。
すると、奏くんはくすっと笑った。
「はいはい。じゃあ、また明日な」
「……うん」
玄関で見送ったあと、私はその場にしゃがみ込んだ。
……本当に、ずるい。
あんなこと言われたら、期待しちゃうじゃん。
私は、奏くんのことが大好き。
でも、恥ずかしくて、どうしても素直になれない。
いつかちゃんと、この気持ちを伝えられる日が来るのかな……。
そして、翌朝。
いつものように詩音ちゃんと待ち合わせをして、学校へ向かった。
「みなみちゃん、今日なんか元気なくない?」
「えっ!? そ、そんなことないよ!」
「ほんとー?」
詩音ちゃんは、不思議そうに首をかしげた。
……危ない、危ない。
奏くんのことを考えていたなんて、絶対に言えない!
そんなことを話しているうちに、私たちは教室に到着した。
……げっ。
奏くん、もう来てる。
しかも、女の子と話してる!?
えっ、誰!?
気になって、つい足が止まった。
すると——。
「一ノ瀬くん。好きです。付き合ってください!」
……えっ!?
告白!?
告白してるの!?
しかも、相手はクラスのリーダー的存在、上野真衣(うえの まい)さん。
かわいくて、明るくて、男子にも人気がある女の子。
……そりゃ、奏くんのこと好きになるよね。
……って、何考えてるの、私!
すると、奏くんが口を開いた。
「ごめん」
「……え?」
「俺、好きな人がいるんだ」
……っ!
心臓が、ドキンと鳴った。
「俺は、白鳥みなみが好きなんだ。みなみ以外は愛さない」
…………え?
えええええええ!?
ちょ、ちょっと待って!!
なんで私の名前を言うの!?
婚約者同士だってバレちゃうじゃん!!
もしかしたら、バレてるんじゃない?
真衣さんは、驚いた顔をしたあと、泣きながら教室を出ていった。
……うそ。
どうしよう。
私は、そっと奏くんのほうを見た。
すると、奏くんと目が合った。
ニコッ。
……笑った!?
しかも、こっちを見て笑ったよね!?
絶対、わざとだ!!
私は慌てて目をそらした。
……もう、ほんとに。
私の学校生活、これからどうなっちゃうの!?